2013 Fiscal Year Annual Research Report
旧制中学校の運動部における集団的規範の形成過程に関する歴史的研究
Project/Area Number |
13J10963
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
堤 ひろゆき 東京大学, 大学院教育学研究科, 特別研究員(DC2)
|
Keywords | 旧制中学校 / 校友会 / 校友会雑誌 / 運動部 / 総動員体制 / 校友会内部の言説 / 日本教育史 / 学校生活 |
Research Abstract |
平成25年度は、対象とする長野県松本市に存在する長野県松本深志高等学校所蔵史料を中心とした調査、および同校同窓会を通じて旧制長野県松本中学校卒業生への接触を試みた。また、長野県長野高等学校・同校同窓会、長野県上田高等学校・同校同窓会、長野県飯田高等学校・同校同窓会、長野県大町高等学校への史料調査を実施した。 長野県松本深志高等学校所蔵史料の調査について、以下の通り実施した。まず、明治期において印刷による校内雑誌以前に発行されていた同人雑誌、昭和初期における長野県松本中学校内で記録された日記類である。調査した史料については大部分を収集し、調査終了後から内容の読解と分析を実施中である。これらの史料は昭和初期を中心としているが、当時の日本社会、旧制中学校が総動員体制に編入される前後の時期のみならず、その過程を明らかにするために不可欠な時期のものであり、当時の学校内での具体的な出来事を知る上で極めて重要な史料である。 加えて、長野県松本深志高等学校同窓会を通じて、昭和16年度卒業生のー人と接触し、三度にわたる聞き取り調査を実施した。その結果、昭和12年度から昭和16年度にかけての旧制松本中学校における学校生活、校友会、運動部等についての状況を詳細に聴取した。実施した聞き取り調査については可能な限り録音し、聞き取り調査内容の分析を実施中である。本聞き取り調査により、文部省による校友会の制度的な総動員体制への編入は、校友会の幹部レベルでは認識されつつも、校友会内の言説が緩衝材の役割を果たしたことで、一般の生徒には意識されることなく円滑に進行していたことが明らかとなった。 長野県長野高等学校・同校同窓会、長野県上田高等学校・同校同窓会、長野県飯田高等学校・同校同窓会長野県大町高等学校への史料調査では、現在のところ所蔵状況の確認ができた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画に基づき、円滑に調査を実施することができた。とりわけ、校友会関係の史料のみならず、対象とする1940年代に中学生であった卒業生ともコンタクトでき、情報を得たことが重要である。卒業生ネットワークに接することができた点は、次年度の研究を遂行する上で評価できる。さらに、複数の旧制中学校に関する史料にもアクセスすることができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
引き続き現地での文献史料と聞き取り調査を実施していく。その際、より詳細に旧制中学校当時の学校生活の様子を把握することに努めたい。また、旧制松本中学校以外の長野県下の複数の旧制中学校を対象として調査を実施し、研究当該期の県内の状況を可能な限り把握し、対象としている旧制松本中学校をより広い文脈の中で位置づけつつ運動部活動および校友会組織の意義について検討していく。 加えて、図書館等に所在する史資料の収集・分析も実施し、地域社会と運動部活動との関係を明らかにしていく。 得られた知見は、論文として積極的に発表する予定である。
|
Research Products
(3 results)