2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13J11020
|
Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
小山 司 大阪府立大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
|
Keywords | 磁性 / カイラル磁性体 / 透過型電子顕微鏡 / 磁気カイラリティ / 小角電子線散乱法 / ローレンツ法 |
Research Abstract |
六方晶構造であるカイラル磁性体CrNb_3S_6に着目し、ローレンツ電子顕微鏡法と小角電子線散乱法を併用した磁気構造解析技術を用いて、研究項目①「電流や磁場等の駆動力の下での"カイラル磁気秩序"のダイナミクス観察」、研究項目②「試料の微細化に伴う"カイラル磁気秩序"のトポロジカル安定性の検証」を行った。①では無磁場中において室温から10Kまで温度を変化させた際及び、10Kにおいて0Tから0.4Tまで磁場を変化させた際のカイラルらせん磁気秩序の観察を行った。その結果、100K以下でカイラルらせん磁気秩序周期は一定であるが、100Kから臨界温度近傍にかけ、徐々に磁気らせん周期が減少していくことが明らかとなった。また、観察試料中(幅15μm×10μm)において磁気周期の乱れは存在していない。一方、臨界磁場以上の磁場を印加しその後外部磁場を減少させた際には、カイラル磁気秩序には縞状のコントラストが不整合の領域が観察された。つまりこの領域において磁気的な転位が存在していることが明らかとなった。②では、フォーカスイオンビーム(FIB)装置を用いた微細加工技術により、形状安定性を調べるため電子顕微鏡観察用薄膜試料に微細な穴を導入した試料を作製し、加工前後での同一領域でのカイラル磁気構造を調べた。FIB肇置を用いて直径100μm程度円柱状の穴をあけた試料を作製した。加工の前後の電子顕微鏡観察により、加工前において周期の乱れは存在しないが、加工後においてカイラル磁気秩序の磁気的な転位が存在し、転位の近傍において磁気周期が変化していた。従って、試料の欠陥により磁気的な転位が捕捉されていることを表す。無磁場中において存在した転位は外部磁場により試料欠陥から移動し、0.22T程度の磁場中においてカイラル磁気秩序は試料の欠陥によらず形成した。カイラル磁気秩序は結晶カイラリティに保護された秩序状態であり、結晶欠陥などの外的要因に対して安定であることを示している。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
装置トラブル等により故障対応に時間が取られたが、本年度の研究の目的に対して一定の成果を出すことが出来たと考えている。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は、カイラル結晶構造を有しうる正方・六方・立方晶系などの空間群に属する磁性体に着目し、カイラル磁気秩序を示す新規な磁性体物質の探索を行う。また、カイラリティ結晶構造を持たないらせん磁性体MnP、FeGe、Ba_<0.5>Sr_<1.5>Zn_2Fe_<12>O_<22>や強相関強磁性体(La_<1-x>Sr_x)MnO_3、(La, Pr, Ca)MnO_3などの磁気構造解析を進める。
|