2013 Fiscal Year Annual Research Report
WEB上に散在する潜在的自然史資料の発掘とその活用
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13J11038
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Research Institution | Kanagawa Prefectural Museum of Natural History |
Principal Investigator |
宮崎 佑介 神奈川県立生命の星・地球博物館, 学芸部, 特別研究員(PD)
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Keywords | 生物多様性 / 博物館資料 / 資料の収集 / 水圏環境教育 / 市民参加型モニタリング / データベース / 情報統合 / voucher |
Research Abstract |
神奈川県立生命の星・地球博物館の魚類写真資料データベースと、WEB魚図鑑のこれまでの遍歴を、博物館学・保全生物学・魚類学・生物地理学などの学術領域における貢献の観点から取りまとめた。魚類写真資料データベースは、時間と場所の情報が付随した魚類の写真を、博物館標本と同様にオリジナルな登記番号を与え、登録および恒久的な保管を公立博物館で行うシステムである。一方で、対外的にはそれが博物館標本に準じたvoucherとして認められた事例は少なく、このような発想にもとづく取り組みの認知も、一部の魚類分類学者以外には、ほとんど広がっていない状況にある。このような状況を改善するため、魚類写真資料をvoucherとして活用する事例研究を実施した。 魚類の写真資料は、実物が存在しないために、voucherとしての限界があることもまた事実である。魚類標本のvoucher能力として、その生物がどういう成長段階でどこにいたのかを示す証拠して引用できる事例研究も行ったが、これは、同様のものであれば魚類写真資料でもその能力を有する可能性があり、魚類標本に準じたvoucherとして示すための準備とした。さらに、魚類写真資料は、魚類標本だけでは補えない視覚的に訴えるものとして、魚類標本に付加的な価値を付随する能力も有していると考えられる。標本と写真の2種類の博物館資料を活用した環境教育は円滑に行える可能性を、体験学習をもとにした環境教育学的研究によって示した。 魚類写真資料データベースは、地球規模生物多様性情報機構(GBIF)に魚類の分布情報を2002年から提供している。GBIFのような情報統合を図る場は、データの活用という点において極めて重要な意味を持つ。北海道の淡水魚類の潜在的な種プールの推定と既存のデータベースから集計した魚類の多様度と環境要因との関係解析を担当し、情報統合が保全生態学的にも重要であることを事例研究として示すとともに、環境教育を行う上での材料を提供した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
インターネット上のSNSや個人や団体のWEBサイトなどに掲載されている、位置情報と時間情報の属性が付随する魚類の写真資料を、博物学的な価値を有する「潜在的自然史資料」とみなし、博物館資料として収集・半永久保管し、学術研究や普及教育に活用するという目的を果たすための、事前の準備(論文の出版含む)が良好に経過しているため。一般市民の協力者・団体がやや少ないことが現在の課題である。
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Strategy for Future Research Activity |
魚類標本や魚類写真資料が、実際にどのように生物多様性保全に関連する研究や教育に役立つ可能性があるのかを模索する。具体的には、生物多様性関連分野の科学的研究(分類学・生態学)への活用、教育(博物館活動や臨床教育)への活用事例を作っていく。また、WEB魚図鑑との連携を強化し、開発された図鑑システムを用いた他の生物分類群への応用可能性や、クラウドコンピューティグ、スマートフォン、タブレット端末等の最新技術を活用した研究と教育を展開する。また、これまでのWEB魚図鑑のアーカイブから掲示板(BBS)の発言内容の解析を行うとともに、類似するような先行研究の事例を調査し、整理する。これらの個別事例をそれぞれ論文という形で公表する。
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Research Products
(16 results)