2014 Fiscal Year Annual Research Report
ヒト上科の妊娠・出産・授乳に母親の生育環境が与える影響の解明
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13J40012
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Research Institution | National Museum of Nature and Science, Tokyo |
Principal Investigator |
久世 濃子 独立行政法人国立科学博物館, 人類研究部, 特別研究員(RPD)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 繁殖 / 大型類人猿 / 人類 / 妊娠 / 出産 / 母乳 / 成長 / 環境 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、ヒト上科(ヒトおよび大型類人猿)の妊娠・出産・授乳において、母親の生育環境(栄養状態と運動量)が与える影響を解明することが目的である。具体的には、ヒトおよびオランウータン(大型類人猿の一種)において、次の仮説を検証する。「性成熟前の栄養過多や運動不足が、つわり、難産(分娩異常)、授乳困難、出産後の母体の健康状態の悪化を招く」 ヒトについては、先進国の女性および狩猟採集民を対象に文献調査を行う。また大型類人猿に関しては、飼育個体および野生個体を対象に直接観察および飼育係や研究者を対象とした聞き取り調査を行うと共に、尿中のホルモン代謝物質を測定し、母親の栄養状態とつわりや難産との関連を定量的に明らかにする。これらの方法で集めた資料について、統計的手法を用いて、仮説を検証することを目的とする。 26年度は、狩猟採集民と日本人の妊娠・出産に関する文献調査、オランウータンの尿中ホルモン代謝物の測定、野生オランウータンに関する資料収集を行った。国際人類学民族科学連合や日本母乳哺育学会等で臨床の専門家(助産師、産科医等)や文化人類学者と情報交換を行い、国内学会(日本霊長類学会等)での研究発表の為に国内旅費を使用した。また国内の動物園で飼育されている大型類人猿の対象とした聞き取り調査と、オランウータンの母子を対象とした行動学的・生理学的データの収集を行った。国内調査の為の旅費や生理学的指標を測定する為に使用する試薬等、物品費で購入した。マレーシア国サバ州のダナムバレー森林保護区において2014年4月~2015年3月に、野生オランウータンの資料収集を行い、オトナ雌の繁殖状態を毎月モニタリングするとともに、ホルモン分析の為の尿サンプルを収集した。野外調査や尿サンプル回収の為、2回マレーシアに渡航すると共に、現地で雇った調査助手の給与や、行動観察データの入力作業の為に謝金を使用した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ヒトの女性の妊娠・出産に関しては、6月に日本人類学会人類進化学分科会シンポジウム「人類進化における母乳哺育」を企画し、国内の著名な産婦人科医や助産師の参加があり、非常に有意義な情報交換を行うことができた。 野生オランウータンの尿中の発情ホルモン代謝産物、妊娠ホルモン代謝産物の濃度を測定し、妊娠の見落としや初期流産はなかった、という結果を得た。野生オランウータンの調査も順調にすすみ、出産が年度内に1例、観察された。また動物園での調査では、新たに1個体の妊娠・出産を観察し、子の離乳および母親の発情再開過程のモニタリングも開始した。これにより同様のモニタリングを行っているサンプル数(母子ペア)は3となった。 25年度から母親の生育環境が妊娠・出産に与える影響の解明の為に、形態学的な手法も取り入れた。大型類人猿の骨盤の耳状面前溝(妊娠出産痕)の有無やその形成要因を調べる為に、ヒトの妊娠出産痕研究の第一人者である、五十嵐由里子博士(日本大学松戸歯学部)と共に、国内の博物館や動物園に所蔵されている、大型類人猿の骨格標本計11個体を調べ、「ゴリラでは雌雄ともに圧痕が高頻度で観察されること」及び「オランウータンの経産雌では圧痕が観察されない」ことを確かめた。また骨格標本の観察だけでなく、動物園より寄贈された大型類人猿(計3個体)の遺体の解剖観察も行い、圧痕の形成に関与すると考えられる、仙腸関節周辺の筋肉や靱帯の付着状況も調べた。 26年度は、これらの研究成果を日本霊長類学会や日本人類学会、The 25th Congress of the International Primatological Societyなど国内外の学会で発表した。また、古今書院から発刊中のフィールドワーカーシリーズ2巻に原稿を執筆し、同シリーズの関連研究会での講演等も行った。
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Strategy for Future Research Activity |
27年度は、2015年4月に出産予定の為、2014年3月から2015年10月末まで研究を中断し、11月から再開準備支援期間となる予定である。しかし研究中断中(2015年10月)に、2014年8月に国際霊長類学会でオーガナイズしたシンポジウムをもとにした特集号を、霊長類学の国際的な学術雑誌として出版することが決まっているので、共同オーガナイザーらと共に、論文の執筆・査読等を行う予定である。また共同研究者らが、野生下および飼育下のオランウータンの雌の繁殖に関する資料収集を継続する予定になっている。
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Remarks |
NHKスペシャル「ホットスポット最後の楽園season2-第5回巨木が作った天空の王国~スンダランド~」 NHK総合(撮影協力,出演)2015/2/15
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Research Products
(7 results)