2013 Fiscal Year Annual Research Report
言語的マイノリティの子どもの二言語リテラシーの習得研究
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13J40029
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
櫻井 千穂 大阪大学, 言語文化研究科, 特別研究員(RPD)
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Keywords | 言語的マイノリティの子ども / 外国人児童生徒 / 文化的言語的に多様な子ども(CLD児) / 対話型 / 読書力 / 読書力発達段階参照枠 / 二言語育成 |
Research Abstract |
本研究は、1)日本国内の言語的マイノリティの子どもの二言語の読書力の発達過程を縦断調査により明らかにし、教育の指針となる「読書力発達段階参照枠」を記述すること、2)「二言語での対話型段階的読み学習」を教育現場との協働で実践し、「読書力発達段階参照枠」に応じた具体的な指導方法を記述すること、の2つを目的とし、行ってきた。 2013年4~7月にかけて、6つの市の学校教育現場において、計55名の児童に第1回目の読書力評価を実施した。この結果については「読書力発達段階参照枠」の作成に向け、現在分析中である。 一方で、これらのフィールドの一つであるS小学校において、二言語読書力評価を実施した3年生児童11名に焦点をあて、母語教育カリキュラムの作成と対話型段階的読み学習の実践を試みた(6~7月はトライアル期間、2013年9月~2014年3月まで本格的に実施)。 母語教育については、二言語教育理論に基づき、アウトプットを重視したプロジェクトベースのカリキュラム(運動会の招待状作成や劇・発表会の開催など)を作成し、週1回の母語教室を実践した。 対話型段階的読み学習では、個々の本読みの目標冊数を決め、レベルに応じた本を継続して読むという取り組みを実施した。retellingによって内容理解を深めた上で、その粗筋を写真やシール付きの読書日誌に記録していくというやり方で、児童のやる気を持続させた。この取り組みを年度末まで続けた後、2014年3月に二度目の対話型読書力評価を実施した。 成果としてどの児童にも日本語読書力、母語の会話力、読書力に伸びが見られた。現場の教員、子どもたち自身にも効果が実感されたため、2014年度は、「特別の教育課程」の一環として、課内の授業の一つとして取り入れられることとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
フィールドとする小学校において子どもの言語力評価を調査(データ収集)を予定通り実施することができた。また。二言語での対話型読み学習の実践をS小学校において実施することができ、参加した子どもたちに読書力の伸びがみられ、その成果を実感できた。
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Strategy for Future Research Activity |
2014年度から、文部科学省により外国人児童生徒のための「特別の教育課程」が実施され、同時に、「外国人児童生徒のためのJSL対話型アセスメントDLA」という言語能力評価ツールの活用が推進されることとなった。本研究で使用している対話型読書力評価ツールは、このDLAの前身であり、筆者はこの開発に関わってきたため、全国各地の複数の教育現場と本評価のフィードバックを行う代わりにそのデータを「読書力発達段階参照枠」の記述に活用するというタイアップが実現した。これにより、本年度は当初予定していたよりも、データの量的確保がスムーズに行く見込みである。
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Research Products
(5 results)