2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13J40054
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
田中 今日子 北海道大学, 低温科学研究所, 特別研究員(RPD)
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Keywords | 太陽系初期 / 微惑星 / 衝撃波 / 蒸発 / 凝縮 / 氷ダスト / 核生成 / 分子動力学計算 |
Research Abstract |
本研究では太陽系初期に頻繁に発生する物質進化について明らかにするため、衝撃波による微惑星の蒸発と凝縮によるダスト生成過程について調べた。まず微惑星の加熱と蒸発過程を記述する蒸発モデルを構築し微惑星の蒸発率を求めた。次にこれまで考慮していなかった微惑星表面から蒸発した蒸気ガスの凝縮過程について調べた。従来広く使われている古典的核生成理論では得られる核生成率が実験と何桁も異なるという問題がある。我々は分子動力学計算を用いて核生成過程の詳細について調べた。成果として主に以下の2点が挙げられる。1.10-80億分子を用いた希ガスの大規模分子動力学計算により従来より4桁小さい現象を調べることが可能になり、室内実験条件と同様の低過飽和状態においてのアルゴンガスの核生成を定量的に再現することに成功した。また凝縮核の性質について詳細に調べ、凝縮核の表面積が大きくなることから実効的な表面エネルギーが大きくなることを明らかにした。また4000体水分子を用いた核生成過程のMD計算を行った。従来の研究より低い過飽和状態のガスから凝縮核が作られる様子を再現し、核生成率を決定するクラスターの表面エネルギーやモノマーの付着確率の過飽和依存性等について明らかにした(Tanaka et al. 2014)。2. 水分子に関して古典的核生成理論に代わる新しい核生成モデル(SPモデル)の有効性が示された。そこで、新しい核生成モデルを用いて微惑星蒸発による水蒸気ガスの凝縮過程について調べた。水蒸気ガスからの冷却過程をモデル化し、核生成理論に基づき蒸発したガスからの再凝縮過程について調べ、凝縮温度やダストサイズ、サイズの量などについて定量的に求めた。その結果、ミクロンサイズ以下の微小な結晶からなる氷微粒子が大量に発生することが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
衝撃波による微惑星の蒸発率を求め、衝撃波の強さと微惑星の蒸発率や蒸発時間との関係を明らかにした。この成果は論文としてまとまり国際雑誌であるAstrophysical Journal掲載された(Tanaka et al. 2013)。さらに凝縮過程について明らかにするため、核生成の素過程を分子動力学計算により詳細に調べた。特に10-80億分子を用いた希ガスの分子動力学計算により室内実験条件と同様の低過飽和状態においてのアルゴンガスの核生成を定量的に再現することに成功した. 分子動力学による核生成過程の研究は3つの論文乏してまとまり全て国際雑誌のJournal of Chemical Physicsに掲載された.
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Strategy for Future Research Activity |
本年度で得られた微惑星蒸発モデルを原始惑星系へ応用する。惑星形成の標準シナリオに基づくと、小さな微惑星から原始惑星へ暴走成長する初期の段階で微惑星の離心率は上昇しはじめ衝撃波が発生する。木星型惑星が形成された後では木星との共鳴により微惑星の離心率はさらに大きくなり非常に強い衝撃波が発生する。惑星形成の各進化段階において、微惑星衝撃波による微惑星の蒸発と凝縮過程を明らかにし、微惑星蒸発が原始惑星系円盤の観測や惑星形成シナリオにどのような影響を及ぼすのかについて明らかにする。
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Research Products
(15 results)