2015 Fiscal Year Annual Research Report
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13J40059
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
堀江 朋子 東京工業大学, フロンティア研究機構, 特別研究員(RPD)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | オートファジー / RNA分解 / 代謝 / 核酸 / 栄養 / リボソーム / RNase |
Outline of Annual Research Achievements |
オートファジーは細胞内の主要な自己成分の分解システムであり、真核生物で広く保存されている。オートファジーはタンパク質の分解機構として広く認知されており、ユビキチン・プロテアソーム系とよく対比されるが、実際にはオートファジーの結果、タンパク質だけでなく核酸(RNA,DNA)、多糖、脂質も分解される。しかし、それらの物質の分解機構と、分解された物質が細胞内の代謝へ及ぼす影響は、これまで全く不明であった。 本年度は、オートファジーによるRNA分解機構を解析するため、出芽酵母の液胞内の主要なRNaseであるRny1に着目し、生理生化学的解析を行ってきた。まず、酵母細胞を飢餓状態にしてオートファジーを誘導させた後、細胞から液胞を生化学的に単離し、含まれるRNAを電気泳動等により解析した。その結果、rny1破壊株では液胞内に消化されないRNAが高度に蓄積していることを見出した。rny1破壊株でオートファジーに関与する遺伝子をさらに欠損させると、RNAの蓄積は観察されなかった。 次に単離液胞を用いたin vitro RNase assay系を確立し、温度、基質特異性、至適pH, 活性化・阻害因子等について、液胞内のRNase活性に関する生化学的特性を見出すことに成功した。さらに、Rny1と結合する因子を免疫沈降法により解析し、候補因子を複数同定しており、現在個別のタンパク質について、再現実験を行っている。 また、Rny1の生理的役割を解析するため、他のRNA分解経路に関わる遺伝子とrny1の多重変異株を作製途中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
私は既知のRNA分解経路に加え、オートファジーも細胞内のRNA分解機構の主要な経路の一つであることを世界で初めて示してきた。従来のRNA分解機構は細胞質で起こる反応であり、一方でオートファジーによるRNA分解は液胞内での分解であり、細胞内の分解の場が明確に異なる。オートファジーにより種々のRNA基質がどのように壊れ、最終産物はどうなるのか?というゴールに到達するためには、まず液胞内の主要なRNaseであるRny1の生化学的な解析が必須となる。また、「液胞」環境中での酵素活性を再現することが不可欠である。上記のことを意識し、これまで全く解析されてこなかった液胞でのRny1の機能を再現することに成功した。その結果、液胞RNaseは非常に強い活性を持つことや、基質特異性の有無、至適pH、イオンの要求性、活性化・阻害条件等を明らかにした(論文投稿準備中)。さらに現在、Rny1の活性を保ったまま酵母から精製することに成功しており、その結合因子をMSにより同定し、現在解析中である。
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Strategy for Future Research Activity |
上記の研究は液胞内RNA(核酸)分解酵素の解析の例であるが、上記の研究からヒントを得て、遺伝学的な解析から液胞内のリパーゼだろうと長年推測されているAtg15についての解析を行いたいと考えた。Atg15は、約20年前に同定されたが、その後未だにリパーゼだとする生化学的な証明がなされていない。しかし、atg15欠損株では、オートファジー誘導条件下において液胞内に分解されない膜構造体であるオートファジックボディが観察されることから、液胞膜以外の膜、すなわちオートファジーに由来する膜やその内容物に含まれる膜系を分解できる活性を持つと推測される。Atg15の解析が困難なのは、上記のRny1と同様、内部にS-Sを持つ糖鎖付加タンパク質であり、発現量も低く、更に短寿命タンパク質であるため、Atg15の単離が難しいからである。そこで私は生化学的な解析を進めるために、まずAtg15抗体を精製し、ウエスタンブロットや免疫沈降が可能な抗体を取得した。また、近年リピドローム解析の発展により、脂質の解析技術が飛躍的に進歩している。漸くオートファジーによる脂質代謝を解析できる時機になり、単離液胞と免疫沈降により精製したAtg15を用いて、リパーゼの活性を測定できるin vitro系を開発し、脂質分解の特性を明らかにしたい。平行して、免疫沈降法により液胞でのAtg15の結合タンパク質を同定し、液胞内での脂質分解経路の全貌を明らかにしたいと考えている。
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Research Products
(1 results)