2015 Fiscal Year Annual Research Report
土壌微生物の養分獲得戦略に基づく有機物分解促進メカニズムの解明
Project/Area Number |
13J40116
|
Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
沢田 こずえ 東京農工大学, 大学院農学研究院, 特別研究員(RPD)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 土壌有機物 / 土壌微生物 / 窒素供給能 / プライミング効果 |
Outline of Annual Research Achievements |
土壌有機物は、大気中CO2炭素の2倍以上、植物バイオマス炭素の3倍以上に相当する約2兆トンの炭素を保持しており、土壌からのCO2放出量は、人為起源CO2放出量の約8倍に相当するため、地球規模の気候変動に大きな影響を及ぼす(Lal 2004)。将来、大気CO2濃度の上昇による植物の光合成促進に伴って、土壌への炭素供給量が増加すると予想される。また、人間活動の発展に伴って、大気中の窒素化合物濃度が増加した結果、土壌への窒素負荷量も増加している。このような土壌への炭素・窒素供給が、土壌中の炭素循環に与える影響は定かではない。特に、降水量が多く窒素供給能が低い日本森林土壌では、欧米諸国の土壌とは異なる結果が得られると予想される。 本研究は、「窒素供給能が低い土壌では、微生物の窒素獲得戦略により有機物分解促進(プライミング)効果が大きい」という仮説を検証するために、降水量の多い高知県森林土壌において、炭素循環に与える炭素・窒素添加の影響を評価することを目的とする。前年度において、異なる母材のヒノキ林土壌の間に窒素供給能の違いが見られなかったため、今年度は当初の予定を変更し、窒素供給能が低いヒノキ林土壌と対照として窒素供給能が比較的高いスギ林土壌を用いた。そして、①各土壌の理化学性と生物性を比較した。また、②炭素・窒素添加後の炭素循環を評価した。 ①において、窒素供給能が低いヒノキ土壌では、細菌に対する糸状菌の割合が高いなど、微生物群集の適応が見られた。②において、ヒノキ土壌、スギ土壌とも、窒素添加の影響は検出できなかった。また、ヒノキ土壌において、13Cグルコースをトレーサーとして同位体分析を行った結果、仮説とは異なりプライミング効果が起こっていないことが分かった。そのため、仮説の立て直しが必要である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
窒素供給能の異なる土壌において、微生物群集組成の違いを解明できたことは大きな進展であった。また、当初の仮説とは異なり、酸性のヒノキ林土壌ではプライミング効果が起きないことが分かったことは、土壌の炭素循環メカニズムを解明する上で重要な成果である。今後、より詳細なメカニズムの解明が必要である。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は、ヒノキ土壌でプライミング効果が起きなかった理由を解明する。最近、酸性土壌ではプライミング効果が起きないことが報告された(Nottingham et al. 2015)。そこで、土壌のpHの影響に着目して、メカニズムの解明を行う。また、前年度、窒素供給能の低い土壌では、基質利用効率が低いことが分かった。その理由を解明するために、アミノ酸やペプチドの影響を解明する。
|
Research Products
(2 results)