2013 Fiscal Year Annual Research Report
コミュニティの社会的イノベーションを都市計画に反映させる必要条件に関する研究
Project/Area Number |
13J40118
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
谷内 久美子 大阪大学, 院工学研究科, 特別研究員(RPD)
|
Keywords | 地域コミュニティ / ソーシャル・キャピタル / 災害意識 / 自発的な住民活動 / 社会的イノベーション / 住民参加 |
Research Abstract |
現在の都市は多くの問題を抱えているが、今後の都市計画において地域コミュニティが産んだ社会的イノベーションを活用していくことは重要である。本研究では、まず、都市問題が地域コミュニティにどのような影響を与え、コミュニティがどのように変遷したのかを把握する。そのコミュニティの変遷の過程で、コミュニティがどのようにして社会的イノベーションを生んだのかを分析する。次に、コミュニティの社会的イノベーションを都市計画の決定手続きの中に反映させるためには、コミュニティと計画主体がどのような協働関係を結ぶべきなのかを提案する。本研究のケーススタディ地域は、災害や公害が都市や地域コミュニティに大きく影響を与えた大阪市西淀川区である。 まず、地域コミュニティをとらえる場として災害に着目した。第二室戸台風に関して29名にヒアリング調査を行い、災害直後には多くの自発的な住民同士の助け合い活動がみられるという結果が得られた。また、災害時での地域の住民活動と災害意識についてアンケート調査を行った。その結果、ソーシャル・キャピタルの高い人ほど、災害に対する意識が高い傾向がみられた。また、災害を経験した人のうち、何らかの地域住民同士の助け合いを行った人ほど、災害に対する意識が高く、地域での災害対策に対しても肯定的な回答が得られた。 次に、大気汚染訴訟の和解条項により設置された道路連絡会の現状について把握するために、東京、尼崎、名古屋の患者会、弁護団にヒアリング調査を行った。いずれの道路連絡会においても、街路樹の植樹やPM2.5の測定結果の開示といった事項については患者会側の意見が盛り込まれやすいものの、自動車交通量の削減、大型車規制といった大気汚染に対する抜本的な対策については道路管理者との間で議論が噛み合わないという状況にあることがわかった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コミュニティの社会的イノベーションを都市計画に反映させる必要条件をテーマとして積極的に研究に取り組んだ。ケーススタディ地域である大阪市西淀川区区に入り込み、文献調査、ヒアリング調査、アンケート調査といった綿密な現地調査を行った。過去の災害に関する住民の行動については、十分な記録が残されておらず、貴重なデータとなりうる。また、都市計画分野において十分な評価がなされていない道路連絡会に関して、議事録の分析、関係者へのヒアリング調査を行っている。 研究業績に関しては、昨年度は学会発表を2回行い、他大学・研究機関の研究者と積極的に交流・討議を行っている。今年度は、昨年度収集したデータを詳細に分析し、論文にまとめる予定である。
|
Strategy for Future Research Activity |
1)地域コミュニティによる社会的イノベーションの創出に関する研究会 公害地域再生センターと共に研究会を開催し、研究方法に関する検討、調査結果に関する考察を行う。研究会は年に3回程度開催する。研究会での議論を元に、国内外での研究成果の公表を進める。 2)大阪市西淀川区における地域コミュニティの変遷の把握 1年目の文献調査、市民グループへの聞き取り調査を元に、地域コミュニティの変遷のモデルを作成する。そのモデルの内容を検証するために、西淀川区民へのアンケート調査を用いる。アンケート調査は、市民グループに入っている市民だけではなく、広く一般の市民に対して行い、市民グループによる公害反対運動や地域再生活動の認知度、関わり方などを把握する。 3)社会的イノベーションを都市計画の決定手続きの中に反映させる場としての道路連絡会の検討 尼崎、川崎、尼崎、名古屋南部、東京地域の道路連絡会への聞き取り調査、文献調査を行う。道路連絡会という枠組みをどのように活用すれば、コミュニティの社会イノベーションを都市計画の決定手続きの中に反映できるのかを考察する。
|
Research Products
(2 results)