2013 Fiscal Year Annual Research Report
マイトラーヤニー・サンヒターの写本校訂と翻訳(ドイツ語訳)
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13J40173
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
天野 恭子 京都大学, 人文科学研究所, 特別研究員(RPD) (80343250)
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Keywords | 古代インド / ヴェーダ文献 / ヴェーダ写本 / マイトラーヤニー・サンヒター / 言語層 / 祭式文献 / 文献成立 / ヴェーダ散文 |
Research Abstract |
古代インドの祭式文献群であるヴェーダ文献のうち、最古層の散文資料を含むマイトラーヤニー・サンヒター(全4巻)が研究対象である。研究課題は、同文献の未発表写本を用いた新校訂本の作成、及び、同文献未訳部分であるIII-IV巻のドイツ語訳(I-II巻は研究代表者により出版済み)の作成であある。 H25年度は、マイトラーヤニー・サンヒターI巻について、写本の校訂作業を進めた。インド現地で写本を収集したHarvard大学のM. Witzel教授より、当研究員が現在提供を受けている写本は、30写本あり、このうちの13本がマイトラーヤニー・サンヒターI巻に相当する。まずこの膨大な写本資料の整理を行い、校訂作業に進んだ。実際に、13本のうちの、Oxford manuscriptと呼ばれる重要写本と、Vaidika Saṃśodhana Maṇḑala (VSM)シリーズの2本を読んだ。これらの写本は、それぞれが今までに知られているどの写本の系統にも属さず、今までに知られている写本の読みと違う読みが多く得られた。それ故、今までの版の読みを数多く訂正し、新校訂本の学術的価値を大いに高めている。 H25年度には、3つの学会発表を行い、主にすでに翻訳したマイトラーヤニー・サンヒターI-II巻の言語的特徴について述べた。これらの研究の中で、それらの言語的特徴が、文献の中の各章において特徴的に分布していることが明らかになり、同文献において複数の言語層が存在することが証明されつつある。このことは、マイトラーヤニー・サンヒター及び同時代の祭式文献の成立の解明に新しい視野を拓いたと考えている。 この視点を得て、マイトラーヤニー・サンヒターの未訳の後半部分(III-IV巻)の写本校訂と翻訳にも着手している。H26年度には、新しく取り組んでいるIII巻の研究から得られる新しい知見を積極的に発表していく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
H25年度中に、新校訂本の基礎となる部分を作り上げ、写本の写真資料の整理などの基礎作業も終えたことに加え、実際に3本の写本を読んで、校訂を行った。大変順調な進展と言える。それに加え、当初はI-II巻の校訂を終えてから取り組む予定であった、III巻の翻訳に着手できたことは大きな進捗である。H25年度に発表できた対象文献の言語的特徴の研究の成果と相まって、文献成立についての多くの新しい知見と、精密で正確な翻訳が得られることが見込まれる。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度において、さらに写本を読み進め、I巻校訂作業の主要部分を完成したいと考えている。H25年度の成果として、すでに新校訂本の基礎はできているので、そこにさらに得られた異読を註として加える形で進めてゆく。校訂本を完成させるためには、校訂作業自体を進めるとともに、写本の出自についての情報や、各写本の特徴などを、序文として記述する必要がある。それには、写本資料の提供者であるHarvard大学、M. Witzel教授と、綿密に打ち合わせする必要がある。そのための渡米を、次年度中に考えている。 また、次年度中に、III巻の翻訳を終える計画である。I-II巻についての言語研究の蓄積を生かし、III巻の言語的特徴について得られる新しい知見を、積極的に発表する。
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Research Products
(7 results)