2013 Fiscal Year Annual Research Report
青少年の進学希望の格差生成に関する社会学的研究-追跡研究と国際比較の視点から-
Project/Area Number |
13J40177
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
王 杰 東京大学, 大学総合教育研究センター, 特別研究員(RPD)
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Keywords | 青少年 / 学歴希望 / 格差生成 / 追跡研究 / 国際比較 / 日本 : 香港 : 上海 / 家庭的背景 / 学年間比較 |
Research Abstract |
本年度はほぼ予定の通り、日本国内、香港、上海においてインタビュー調査を実施し、今後の分析に必要な補足データを入手した。 日本国内の3時点パネルデータを用いた縦断的研究は予定より進度が速かった。東北エリアで収集した3時点パネルデータをもとに執筆した論文「日本の青少年の学歴希望の縦断的変化に影響を与える諸要因」は、オリジナルな知見を得ている。この地域の児童生徒の進学希望は「高校」と「大学以上」に二極化する傾向がある。親の教育水準は子どもの一時点の進学希望だけでなく、進学希望の変化にも影響を及ぼす可能性がある。3分の1の追跡対象者は小6、中3と高3の3時点で同じ水準の学歴を希望するのに対して、3分の2の対象者の希望する学歴は変化した。進学希望の加熱と冷却の割合はほぼ同じである。進学希望の加熱は成績と家庭の収入に規定されるが、その冷却は性別、成績、親の学歴に規定される。 香港と上海の青少年の進学希望のあり方と格差生成について、日本教育学会と日本教育社会学会の年度大会でそれぞれ研究成果を発表した。更に、親子ペアのデータを用いて「中学3年生の学歴希望の中日比較」という論文を執筆し以下の知見を示した。①日本の2エリアと比べ、中国の2エリアの生徒の進学希望はより広範囲で高い水準まで加熱され、大学院、学部教育への希望率が非常に高い。②日本の中3の大学院希望率が低いのに対して、中国の中3の短期高等教育の希望率が低い。③両国の中3の進学希望は同じくタテ型であるが、日本では主として高校、短期高等教育と学部教育の3層であり、中国では主として高校、学部教育と大学院教育の3層である。④両国の中3の進学希望の格差生成のメカニズムは大きく違わない。中3の進学希望に及ぼす家庭収入の直接影響について、中国より日本のほうがやや強い。この論文は中学生の進学希望に関する日中比較研究の空白を埋めるものとなる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
採用決定(平成24年度10月)から特別研究員採用(平成25年4月)までの期間に、日本で蒐集した3時点のパネルデータを分析し、研究発表と論文の執筆、投稿に取り組んだため、予定より早く国際比較研究を始められた。
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Strategy for Future Research Activity |
中華圏では青少年の進学希望に関する先行研究が乏しく、その格差生成のメカニズムを明らかにする研究は皆無に近い。香港の研究者はPISA2012の参加者を対象に、青少年の教育アスピレーションと職業アスピレーションを追跡するプロジェクトを立ち上げ、フォローアップ調査を実施している。香港データの分析をいっそう深め、研究成果の比較を可能にするために、関係者との研究連携を図る必要がある。
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Research Products
(6 results)