2014 Fiscal Year Annual Research Report
青少年の進学希望の格差生成に関する社会学的研究-追跡研究と国際比較の視点から-
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13J40177
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
王 杰 東京大学, 大学総合教育研究センター, 特別研究員(RPD)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 青少年 / 進学希望 / 教育アスピレーション / 追跡的研究 / 格差生成 / 家庭的背景 / 成績 / 中日比較 |
Outline of Annual Research Achievements |
①青少年の進学希望の格差生成に関する追跡的研究の再考をおこなった。追跡率の高い東北エリアで取得した2004年小6コーホートと2007年小6コーホートの3時点パネルデータから得た結果を比較し、日本教育社会学会の第66回大会で「青少年の学歴希望の変化再考」を口頭発表し、さらに研究報告書論文「パネルデータからみる青少年の学歴希望の変化-2つのコーホートの比較から-」と「青少年の学歴希望の縦断的変化と家庭的背景」を執筆した。主な知見は次の通りである。どのコーホートのパネルデータの分析からも、この地域の児童生徒の進学希望の早期定着率が高く、学年の上昇に伴い「高校まで」と「大学以上」へさらに二極化する傾向が示される。高学歴希望の早期定着も低学歴希望の早期定着も家庭の経済文化的背景から顕著な影響を受ける。主な養育者が高等教育を受けた経験があるか否かの規定力はとりわけ大きい。中学校段階と高校段階の進学希望の加熱冷却も明らかに家庭環境の影響を受ける。中学校段階と高校段階の加熱冷却を経て、対象者の進学希望の格差がいっそう拡大していく。高所得層出身者の進学希望は加熱する可能性が高く、しかも大学へシフトする比率が高い。低所得層出身者の進学希望は冷却する可能性が高い。 ②香港と上海の小学校6年生の進学希望の形成状況、家庭の所在地、家庭環境および成績による学歴希望の格差について、アジア太平洋教育学会で口頭発表した。香港の小6の進学希望は大学院、学部、短期高等教育、高校という4つのレベルに比較的均等に分布しているが、上海の小6のほとんどが大学院か学部教育を希望しており、高学歴志向が突出する。上海の小6の進学希望に見られる都市農村間格差は香港のそれよりずっと大きい。一方、家庭所得が小6の進学希望に及ぼす直接影響について、上海より香港のほうが目立って大きい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
第2年度の遂行はほぼ計画の通りである。 日本国内の関東エリアに続き、東北エリアの青少年の進学希望の研究に関して、既存の質問紙調査のデータベースへの補足として、研究者および高校卒業者を対象にインタビュー調査をおこなった。インタビューでは、対象者の幼少児期から最終学歴取得までの間の学校内と学校外教育経験、就職活動の経験、就業状況、現在の家族構成と生活状況などをうかがっている。海外の研究対象地区である香港と上海について、研究者との意見交換や関連資料の収集に力を入れた。台湾の青少年の進学希望に関して、ナショナルデータが存在するため、文献や関連資料の収集をおこなった。また、研究成果について、国内の日本教育社会学会と国際学会であるアジア太平洋教育学会、中日教育研究協会で口頭発表し、報告書や学術誌などで公表、周知することができた。 ほかに、本研究課題と密接に関わる科研費基盤研究(B)「青少年期から成人期への移行についての追跡的研究」(研究代表 耳塚寛明)と科研費基盤研究(B)「教育費負担と学生に対する経済的支援のあり方に関する実証研究」(研究代表 小林雅之)に参加し、より大規模な全国調査データを分析することが可能となった。さらに、新しい研究課題「外国人留学生供給源の変動とその規定要因」を用いて科研費基盤研究(C)を申請し、交付内定の通知を受けた。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度では、本研究課題のデータ収集に費やす時間が相対的に少なく、業績の取りまとめが主な取り組みとなる。国内外の学会で研究成果を報告し、学術論文を執筆し、他の研究者との学術交流を続ける。単著『青少年の進学希望の形成と格差生成-縦横調査と日中比較から』(仮)の刊行が期待される。 科研費基盤研究(C)(一般)の研究課題である「外国人留学生供給源の変動とその規定要因-中国の大学の日本語教育と学習者を事例に」(平成27-29年度)は交付内定を受けたため、特別研究員の最終年度に限って代表者として2つの研究課題を推進するが、特別研究員の研究課題を優先し、エフォートの70%を占めるように時間の配分に留意する。
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Research Products
(10 results)