2013 Fiscal Year Annual Research Report
20世紀前半のドイツにおける国民保険化の過程-在宅看護・家事援助を事例として-
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13J40240
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
馬場 わかな 東京大学, 大学院経済学研究科, 特別研究員(RPD)
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Keywords | ドイツ / 社会国家 / 保険 / 扶助 / 在宅看護・家事援助 / 家族 |
Research Abstract |
本研究の課題は、女性が主婦や母親としての役割を果たせない家族に対する支援を展開した在宅看護・家事援助を事例として、機能不全に陥った家族を「標準家族」へと軌道修正することで、社会国家に包摂しようとした試みを歴史的に解明することである。この「標準家族」モデルは、19世紀末から20世紀半ばまでの時代、すなわちドイツにおける「20世紀的社会」を理解する上で重要な糸口である。 採用1年目である平成25年度は、ドイツなど、先進工業諸国における第二次大戦後の社会保障を形成する二つの柱である(社会)保険と(社会)扶助に関する先行研究の整理を行うために、この分野に関する邦語および外国語文献を収集した。 さらに、8月にはハンブルクの州立公文書館で関連文献の収集を行ったほか、フランクフルトの都市史研究所に赴き、在宅看護・家事援助に関する史料を閲覧・収集した。フランクフルトは、ドイツで最初に在宅看護・家事援助協会が創設された都市である。 年次計画では、在宅看護・家事援助の保険化を進める上で重要な役割を果たしたデュッセルドルフの在宅看護・家事援助協会についても、市公文書館で史料の閲覧・収集を行う予定だったが、事前の調査でフランクフルトに膨大な史料が残されていることがわかったため、初年度はフランクフルトのみで行うことにした。現在、フランクフルトで収集した史料を整理し、分析を進めているところである。 このほか、在宅看護・家事援助についてこれまでの研究を通じて明らかになったことを経済史研究会において口頭報告した一方で、論文としてもまとめた。また、第二帝政期ハンブルクの在宅看護・家事援助をより詳細に扱った論文を加筆・修正中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では、フランクフルト及びデュッセルドルフの在宅看護・家事援助については、ハンブルクでは取り沙汰されなかった在宅看護・家事援助の保険化をめぐる議論のみを中心に解明する予定だったが、今年度、フランクフルトで閲覧・収集した史料は、保険化に限らず、その全貌を解明することが可能なものだったため。
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Strategy for Future Research Activity |
フランクフルトについては在宅看護・家事援助に関する十分な史料が閲覧・収集できたため、平成26年度はデュッセルドルフでの史料収集を最優先課題とする。 また、フランクフルトで閲覧・収集した史料が多かったことから、ハンブルク、フランクフルト、デュッセルドルフという3事例の比較を行うという当初の計画を修正し、フランクフルトを単独に扱った論文を執筆することを当面の課題とする。
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Research Products
(2 results)