2006 Fiscal Year Annual Research Report
転写メディエーターによる転写制御と生理的意義の研究
Project/Area Number |
14002011
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
石井 俊輔 独立行政法人理化学研究所, 石井分子遺伝学研究室, 主任研究員 (00124785)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
島田 信量 独立行政法人理化学研究所, 石井分子遺伝学研究室, 基礎科学特別研究員 (80391978)
石田尾 武文 独立行政法人理化学研究所, 石井分子遺伝学研究室, 協力研究員 (20391857)
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Keywords | 遺伝子発現 / 転写制御 / 転写メディエーター / 転写因子 / 発生 / マウス / ショウジョウバエ / 立体構造 |
Research Abstract |
転写因子ATF-2ヘテロ変異マウスが、高頻度に乳がんを発症することを見出した。そして種々のタイプのヒト乳がんにおいても、ATF-2 mRNAレベルの低下が示された。これはATF-2が乳がんの抑制遺伝子であることを示唆している。乳がんなどの固形がんにおいて、がん細胞は低酸素状態になることが知られている。ATF-2欠損細胞を用いた解析によって、ATF-2は低酸素刺激によりp38などを介して活性化され、一群の標的遺伝子を誘導し、アポトーシスを誘導するのに必須であることが明らかとなった。アレイ解析によって、ATF-2はGADD45αを含む一群の遺伝子の低酸素による転写誘導に必須であることが示された。さらにATF-2はストレスの無い状態で、細胞増殖を抑制することが示され、アレイ解析によって、乳がん抑制遺伝子MaspinがATF-2の標的遺伝子であることが明らかにされた。Maspin及びGADD45α遺伝子の発現は、ATF-2ヘテロ変異マウスの乳がん組織において顕著に低下していた。以上の結果から、ATF-2ヘテロ変異マウスにおいては、細胞増殖抑制機能を持つMaspinの発現レベルが低下し、乳腺細胞ががん化し、さらに低酸素状態になると、正常細胞で観察されるGADD45α遺伝子などの発現誘導によるアポトーシスが起こらず、乳がんの発症に至ると考えられた。ATF-2にようGADD45α遺伝子の転写制御を解析した結果、ATF-3は他の2つの転写因子Oct-1,NF-Iと共に、コアクティベーターとして機能する乳がん抑制因子BRCA1と複合体を形成し、GADD45α遺伝子プロモーターに結合して、転写を誘導することが示された。このように、転写因子ATF-2とコアクティベーターBRCA1は協調的に作用することによって、乳がんの発症を抑制することが示唆された。
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Research Products
(10 results)