2002 Fiscal Year Annual Research Report
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14015207
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
桑島 邦博 東京大学, 大学院・理学系研究科, 教授 (70091444)
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Keywords | フォールディング / 速度論 / 計算機シミュレーション / ストップトフロー / 分子動力学 / プロリン異性化反応 / 巻き戻り中間体 |
Research Abstract |
蛋白質フォールディング機構の研究は、本来、蛋白質一次配列や立体構造の経験的データーベースに基づく帰納的なアプローチとは相補的な関係にあり、ゲノム情報科学における根元的な課題として重要視されなければならない。本研究は、このような立場から、球状蛋白質フォールディングの統一的描像を実験と計算機シミュレーションを用いて確立することを目的とする。以下の研究成果が得られた。 (1)プロリンを含まないスタフィロコッカル・ヌクレアーゼ(SNase)の巻き戻り反応をストップトフローpHジャンプ法により解析した。その結果、巻き戻り反応が複数の指数項で表される多相的な反応であることがわかった。一般に巻き戻りの多相性は変性状態におけるプロリン・ペプチド結合の遅い異性化反応に帰せられるが、上記の結果は、プロリン異性化以外にも多相性をもたらす要因があることを示している、ストップトフロー・ダブルジャンプの結果より、多相性の原因は、(i)SNaseの巻き戻り初期に複数の過渡的中間体が蓄積する、(ii)各中間体を通して複数の巻き戻り経路が存在する、の二点であることがわかった。今回の結果は、単一のポリペプチド鎖が複数のフォールディング経路を通って天然状態に至ることを明確に示した最初の例であり、今後、巻き戻りにおける複数経路の役割をさらに調べることが必要である。 (2)ヤギαLAの大腸菌による組換え体(N末メチオニンあり)と真性体(メチオニンなし)の二種の蛋白質を対象に、分子動力学によるアンフォールディングシミュレーションを行なった。その結果、組換え体に付加しているN末端のメチオニン残基により、常温においてもN末端近傍の揺らぎが著しく大きくなることがわかった。今後、NMR等の実験等によりこれを確かめる必要がある。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] K.Kuwajima: "Chaperone-Affected Folding of Globular Proteins"J.Biol.Phys.. 28. 77-93 (2002)
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[Publications] 桑島 邦博: "蛋白質フォールディングの2つの描像:普遍的描像は可能か?"蛋白質 核酸 酵素. 47・6. 657-662 (2002)
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[Publications] K.Kuwajima: "The Role of the Molten Globule State in Protein Folding : The Search for a Universal View of Folding"Proc.Indian Nat.Sci.Acad.. 68. 333-240 (2002)
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[Publications] K.Kuwajima: "The use of the time-resolved X-ray solution scattering for studies of globular proteins"Spectroscopy : an international J.. 16. 127-138 (2002)
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[Publications] M.Arai: "Fast Compaction of alpha-lactalbumin During Folding Studied by Stopped-Flow X-ray Scattering"J.Mol.Biol.. 321. 121-132 (2002)
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[Publications] T.Inobe: "Equilibrium and kinetics of the allosteric transition of GroEL studied by solution X-ray scattering and fluorescence spectroscopy"J.Mol.Biol.. 327. 183-191 (2003)