2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14017074
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Research Institution | Kyushu Institute of Technology |
Principal Investigator |
林 初男 九州工業大学, 大学院・生命体工学研究科, 教授 (00108664)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中島 孔志 九州工業大学, 情報科学センター, 助手 (90346867)
立野 勝巳 九州工業大学, 大学院・生命体工学研究科, 助手 (00346868)
石塚 智 九州工業大学, 大学院・生命体工学研究科, 助教授 (40124804)
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Keywords | 海馬 / 貫通路刺激 / CA1領野 / CA3領野 / 時空応答 / 歯状回 / 神経回路モデル |
Research Abstract |
本研究の目的は、嗅内皮質からの信号の時間空間関係のCA1領野におけるコーディングの性質を明らかにすることである。 [貫通路刺激に対する海馬CA1領野の時空応答: in vivo] Angular bundleの側頭側(正中線から4〜4.5mm)を刺激すると、CA1領野で単シナプス投射と考えられる潜時5〜7msの安定した応答が観測され、正中側(正中線から3.5mm)を刺激すると、多シナプス投射と考えられる潜時12〜22msの応答が観測された。側頭側-正中側の順に刺激すると、刺激の時間間隔が20ms以下の場合、正中側刺激に対するCA1の応答は観測領域全体で抑制されたが、30ms以上の場合、CA1の局所領域で多シナプス投射と考えられる応答が強く増強された。この増強は、刺激間隔50〜100msで最も大きい。逆に正中側-側頭側の順に刺激しても、側頭側あるいは正中側を単独に2回続けて刺激しても、このようなCA1の応答の強い増大は起きなかった。これらの結果は、内嗅野からの信号のタイミングと空間的位置関係がCA1の時空応答のバラエティを作っていることを示している。 [貫通路刺激に対する歯状回およびCA3領野の応答: in vitro] 上記の多シナプス投射は海馬の3シナプス経路を経由したCA1領野への投射であると考えられるので、歯状回およびCA3領野の応答特性を明らかにしておく必要がある。本年度は海馬切片を用いた。歯状回およびCA3領野は、15Hz以下の貫通路あるいは苔状線維刺激に対して集合活動電位を発生し、よく応答するが、15Hz以上の刺激に対しては応答しにくいことがわかった。さらに、抑制性の結合が阻害されていない海馬切片を用い、CA3領野の応答のダイナミカルな性質を明らかにした。 [歯状回の神経回路モデルの構築] 上記の実験結果のより深い理解のために、また将来海馬を模倣した記憶モデルを構築するために、海馬の神経回路モデルを作ることが大切である。本年度は、400個の顆粒細胞、16個のバスケット細胞、および5個の苔状細胞から成る歯状回の神経回路モデルの構築を試みた。本歯状回神経回路モデルは、実験結果をよく再現し、10Hz以下の周期刺激に対してよく応答した。バスケット細胞を経由したフィードフォワードの抑制がこの周波数特性に大きく寄与していることがわかった。
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Research Products
(4 results)
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[Publications] M.Yoshida, H.Hayashi, K.Tateno, S.Ishizuka: "Stochastic resonance in the hippocampal CA3-CA1 model : A possible memory recall mechanism"Neural Networks. 15. 1171-1183 (2002)
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[Publications] K.Nakashima, K.Takahashi, S.Ishizuka, H.Hayashi: "Nonlinear Responses of Potentiated Hippocampal Slices to Mossy Fiber Stimulation"Proceedings of the International Symposium on Nonlinear Theory and its Applications. 311-314 (2002)
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[Publications] 中村彰一, 林 初男, 吉田基治, 石塚 智: "海馬歯状回の神経回路モデルとその応答特性"電子情報通信学会技術研究報告(NLP). 101・613. 29-35 (2002)
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[Publications] 林 初男: "バイオミメティックスの新展開(担当章:脳のカオスと情報処理)"エヌ・ティー・エス. 28-49 (2002)