Research Abstract |
わが国にはなお120-140万人のB型肝炎ウイルス(HBV)キャリアが存在するが,いまだ満足すべき抗ウイルス療法が確立していない.新たな抗ウイルス療法として,逆転写酵素阻害剤であるラミブジンがB型慢性肝炎に用いられているが,長期投与を受けた患者の17-75%に耐性ウイルスの出現が報告され重大な問題となっている.本研究では,薬剤耐性の分子基盤を明らかにし,さらに,効率的な新規薬剤の開発,抗ウイルス効果の検証を目指すものである. まず,HBVのin vitro複製系を用いて,ラミブジン耐性変異株の複製能につき検討した.ラミブジン耐性株として,L528M, M552I, M552V, L528M/L552I, L528M/M552Vの5種を作成し,これらを肝癌細胞株に導入し,Southern blotによりHBVの複製につき検討した.その結果,M552I, M552Vでは野生株に比し,その複製能が著しく減弱していたが,L528Mが加わることにより,複製能が回復することが明らかになった.引き続き,野生株および臨床的に認められるM552V, M552I, L528M/M552Vの3種のラミブジン耐性株に対し,21種の逆転写酵素阻害剤の効果につき比較検討した.21種の逆転写酵素阻害剤のうち,4種(MCC-478, Adefbvir, Entecavir, Lobucavir)のみがすべてのラミブジン耐性株に対して有効であった.MCC-478は濃度依存性にHBVの複製を阻害し,HBVの複製を50%阻止するのに必要な薬剤濃度(EC_<50>)はM552Vに対し3.3μM, M552Iに対し2.6μM, L528M/M552Vに対し2.0μMであり,野生株のみならずすべてのラミブジン耐性株に対して強力な抗ウイルス効果を示した.MCC-478はB型肝炎の抗ウイルス療法における単剤あるいは併用療法の有力な候補と考えられた.
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