2002 Fiscal Year Annual Research Report
醸造技術の展開と継承普及―日本酒と醤油を事例として
Project/Area Number |
14023230
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Research Institution | National Institute for Educational Policy Research |
Principal Investigator |
塚原 修一 国立教育政策研究所, 高等教育研究部, 総括研究官 (00155334)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鎌谷 親善 国立教育政策研究所, 客員研究員 (60057982)
橋本 昭彦 国立教育政策研究所, 教育政策・評価研究部, 総括研究官 (80189480)
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Keywords | 醸造技術 / 江戸時代 / 日本酒 / 酒造技術 |
Research Abstract |
日本酒、醤油などを製造する醸造技術は、日本国内において独自に発展をとげた代表的な技術のひとつである。これらの技術は元禄期に一定の水準に達し、江戸末期にはいくつかの重要な改良が行われ、今日の技術につながっている。本研究では、日本酒を中心として各地の博物館、製造業者などが所蔵する醸造技術関係の一次資料を調査して、資料の体系化を行うとともに、上記のような在来技術の発展過程を明らかにする。 本年度は、灘、伏見、伊丹、広島において資料調査を行い、伊丹について主要資料の翻刻を行った。主要な成果は以下のようである。 (1)江戸期の酒造法については、当時の百科事典である『本朝食鑑』や『和漢三才図会』、同時代の地誌などに記述がみられる。しかし、叙述に少なからぬ疑義を含むことが明らかとなったことから、より適切な資料として、同時代の酒造書や酒造家の記録を検討する必要がある。 (2)近世日本の酒として、最初に著名となったのは安土桃山時代に創始された奈良諸白の製造法である。伊丹の酒造法はそれを精緻で量産可能な技術としたもので、元禄・享保期に隆昌をむかえた。その特色は、掛米、麹米ともに精白した諸白で、その歩合は約1割であった。酒母育成と醪製造の工程は分離され、それに三段仕込を行うことで量産体制が創出された。醸造期間は、立秋ころから仕込みをはじめ、寒をへて翌年の三月期まで製造する三季醸造であった。 (3)製造される酒は商品としてのそれであり、圧倒的な部分が江戸へ積み下されていた。当初の人や馬による搬送は元禄期から海上輸送となり、この大量輸送方式と大量生産方式があいまって、江戸期の酒造業の隆昌を実現させた。
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