2002 Fiscal Year Annual Research Report
DNA-PKを介した放射線損傷シグナル伝達機構の解析と癌放射線治療への応用の試み
Project/Area Number |
14030024
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
松本 義久 東京大学, 大学院・医学系研究科, 助手 (20302672)
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Keywords | DNA依存性プロテインキナーゼ / XRCC4 / DNA二重鎖切断修復 / シグナル伝達 / タンパク質リン酸化 / リン酸化状態特異的抗体 / 放射線感受性 / 放射線増感 |
Research Abstract |
DNA依存性プロテインキナーゼ(DNA-PK)は放射線応答において重要な役割を担うと考えられているが、「真の基質」が明らかになっていなかった。私は、平成13年度までの研究で、XRCC4タンパク質がDNA-PKの真の基質の一つであることを示し、また、in vitroにおけるリン酸化部位3ケ所を同定し、リン酸化状態特異的抗体を作製した。本年度は、放射線感受性におけるリン酸化の意義解明を中心に研究を進めた。まず、リン酸化状態特異的抗体を用いた解析により、in vitro, in vivoの両方において、3ケ所のうち2ケ所が主要なリン酸化部位であることが示唆された。また、XRCC4欠損細胞M10に正常あるいは変異XRCC4 cDNAを導入し、stable transformantの性状解析を行ったところ、主要な2ケ所のリン酸化部位をアラニンに置換した変異体のtransformantは、正常XRCC4のtransformantに比べ、放射線感受性がわずかに高く、増殖がやや遅い傾向を示した。これらの結果から、この2ケ所のリン酸化が修復を正確かつ効率的に行うために重要である可能性が考えられた。これらの結果は、ヒトを含む哺乳類細胞の放射線応答の分子メカニズムの理解ばかりでなく、また、放射線感受性予測や増感の新しい方法にもつながりうると期待される。 なお、これまで、DNA-PK、ATM、ATRは主にグルタミンに隣接するセリンまたはスレオニンをリン酸化するという経験則が広く受け入れられてきたが、上記3ケ所のリン酸化部位のうち2ケ所はグルタミンに隣接していなかった。この結果から、少なくともDNA-PKに関しては、S/T-Q以外の部位をリン酸化する可能性が考えられた。また、これまで報告されているDNA-PKのin vitro基質分子についても他のリン酸化部位が存在する可能性を考え、p53について検討を行った。その結果、既報のSer15とSer37に加え、新しいリン酸化部位が見つかった。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] Hosoi, Y, Matsumoto, Y. et al.: "Phosphorothioate oligonucleotides, suramin and heparin inhibit DNA-dependent protein kinase activity"British Journal of Cancer. 86. 1143-1149 (2002)
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[Publications] Komuro, Y., Watanabe, T., Hosoi, Y., Matsumoto, Y.et al.: "The Expression pattern of Ku correlates with tumor radiosensitivity and disease free survival in patients with rectal carcinoma"Cancer. 95. 1195-1205 (2002)
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[Publications] Yoshida, M., Hosoi, Y., Miyachi, H., Ishii, N., Matsumoto, Y.et al.: "Roles of DNA-dependent protein kinase and ATM in cell-cycle-dependent radiation sensitivity in human cells"International Journal of Radiation Biology. 78. 503-512 (2002)