2004 Fiscal Year Annual Research Report
がんの血行性転移に関与する細胞接着分子の発現制御遺伝子の研究
Project/Area Number |
14030092
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Research Institution | Aichi Cancer Center Research Institute |
Principal Investigator |
神奈木 玲児 愛知県がんセンター(研究所), 分子病態学部, 部長 (80161389)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田口 修 愛知県がんセンター(研究所), 分子病態学部, 室長 (00142167)
八尾村 多佳朗 愛知県がんセンター(研究所), 分子病態学部, リサーチレジデント
上田 大 愛知県がんセンター(研究所), 分子病態学部, リサーチレジデント
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Keywords | 血行性転移 / 細胞接着分子 / セレクチン / シアリルルイスa / 糖鎖不全現象 / 大腸癌 / エピジェネティック・サイレンシング / CA19-9 |
Research Abstract |
我々はがんの血行性転移に関与する細胞接着分子に関連する遺伝子につき研究を行っている。本年度は特に、消化器系の癌で発現が増加するシアリルルイスa(CA19-9)についゼ研究を行った。この糖鎖は血管内皮の細胞接着分子セレクチンの特異的リガンドであり、癌細胞の血管内皮への接着を媒介して血行性転移に関与する。しかし、なぜこの糖鎖の発現が癌で亢進するのか、その機序は長い間不明であり、癌化に伴って何らかのシアリルルイスaの合成酵素遺伝子が誘導されるのではないかと考えられてきた。しかし、本年度の我々の検討により、消化器癌におけるシアリルルィスaの発現亢進においては、むしろ合成不全の機序が重要な役割を演じることが判明した。我々は消化器癌におけるのうち大腸癌に焦点を合わせ解析を進めたところ、大腸組織では、非癌正常粘膜上皮細胞に、シアリルルイスaより複雑な構造を有するジシアリルルイスaが強く発現している事を見いだした。ジシアリルルイスaはシアリルルイスaにさらにシアル酸残基がひとつ2-6結合で付加した糖鎖構造を有する。その合成系はシアリルルイスaと共通しており、さらに2-6結合でシアル酸残基を付加する酵素の存在によって、非癌正常粘膜上皮細胞ではジシアウルルイスaが合成される。このことは、非癌正常粘膜上皮細胞にはシアリルルイスaの合成に必要な糖鎖関連遺伝子がすでに十分に存在しておいるが、さらに2-6結合でシアル酸残基を付加する酵素がともに発現しているために、シアリルルイスaではなくてジシアリルルイスaが発現するに至っていることを示唆している。2-6結合でシアル酸残基を付加する酵素ST6GalNAc-VIのmRNA発現は非癌大腸上皮細胞において強くし、癌細胞では著しく低下していた。細胞の悪性化に伴って本遺伝子の発現が低下し、ジシアリルルイスaの合成が障害された結果、癌細胞ではシアリルルイスaが蓄積する。糖鎖の癌性変化の機構として指摘されてきた癌化に伴う「糖鎖不全現象」の好例であると考えられた。癌細胞をトリコスタチンAなどのヒストン脱アセチル化阻害剤で飼うとST6GalNAc-VI遺伝子の発現が回復し、それにともなってシアリルルイスaが減少しジシアリルルイスaの発現が誘導された。このことは、癌細胞におけるシアリルルイスaの発現が、ST6GalNAc-VI遺伝子のエピジェネティック・サイレンシングによって引き起こされていたことを示唆する。
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Research Products
(6 results)