2002 Fiscal Year Annual Research Report
原索動物・ナメクジウオ類の原腸胚における原腸前端部の発生学的役割
Project/Area Number |
14034246
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
安井 金也 熊本大学, 発生医学研究センター, 助教授 (70191111)
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Keywords | ナメクジウオ / 頭部形成 / BMPシグナル / 初期発生 / 体軸形成 / β-カテニン / 原腸切除 |
Research Abstract |
ナメクジウオでは原腸陥入にともなって、bmp2/4 mRNAが原腸前端と背側に発現する。BMP2/4が蛋白レベルで機能しているかどうかを確認するために、リン酸化Smad1の存在を免疫組織学的に確認したところ、bmp2/4と同所的に分布していることが明らかになり、ナメクジウオBMP2/4が原腸前端で機能していることを示唆した。このナメクジウオに特異的な原腸前端の除去実験を行った。原腸を切除された初期原腸胚は再度、原腸陥入様の発生動態を示した。処理胚を中期原腸胚状と初期幼生の各ステージで固定し、前者でbrachyury (br), wnt8, goosecoid (gsc), otxの発現パターンを調べ、後者ではptx (Pitx)の発現および連続セクションによる組織・形態学的観察を行った。その結果、後方ではgscの発現より背側の分化が明らかになり、陥入した原腸では前端までbr, wnt8が発現し、otxの発現が消失した初期原腸摘出個体では、原腸前端領域が消失していることを示唆する。初期幼生に対応する処理胚では、脊索は前端まで伸長するが、前端ではその位置が背腹の中央か、やや腹側を占める。また、脊索の周囲には神経組織が拡大して、一部嚢胞状の構造を呈する。形態的には背腹軸が不明になる。それより後方では、内胚葉組織が萎縮し、神経索・脊索が拡大する。処理胚ではptxの発現が失われることから、初期原腸の切除により、左側の属性が失われると考えられる。さらに初期の発生と背側・頭部領域の確立の関係を明らかにするために、β-Cateninに注目して、免疫組織学的方法により、その分布パターンを未受精卵から初期原腸胚まで明らかにした。β-Cateninの細胞質内分布は第1分裂から非対称性が現れ、32細胞期まで確認された。その後、胞胚期で核内への移行が起こるが、脊椎動物と違い全細胞にそれが認められた。ところが、背側特異的遺伝子が発現するのとほぼ同じ頃には、背側の細胞で高濃度の分布を示した。LiCl処理により、初期原腸胚期の核内β-Cateninの分布を動物極側に移動させることができる。それらの個体ではgsc, hlx3,otxの発現領域が変わり、形態的にも放射相称的であるが、hnf3およびptxで確認した背腹、左右両軸は正常であった、これらの結果は、ナメクジウオでは発生の極めて早い時期から脊椎動物と違った分子機構が働いていることを示唆する。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] Satoh, G, Takeuchi, J, Yasui, K, Tagawa, K, Saiga, H, Zhang, PJ, Satoh, N: "Amphi-Eomes/Tbr : An Amphioxus cognate of vertebrate Eomesodermin and T-brain1 genes whose expression pattern reveals evolutionarily distinct domain in amphioxus development"Journal of Exprimental Zoology (Molecular Development and Evolution). 294. 136-145 (2002)
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[Publications] Wang, Y, Zhang, PJ, Yasui, K, Saiga, H: "Expression of Bblhx3, a LIM-homeobox gene, in the development of amphioxus, Branchiostoma belcheri tsingtauense"Mechanisms of Development. 117. 315-319 (2002)
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[Publications] Fujii, H, Nagai, T, Shirasawa, H, Doi, J, Yasui, K, Nishimatsu, S, Takeda, H, Sakai, M: "Anteroposterior patterning in Xenopus embryos : Egg fragment assay syste reveals a synergy of dorsalizing and posteriorizing embryonic domains"Developmental Biology. 252. 15-30 (2002)
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[Publications] Yasui, K, Li, G, Wang, Y, Saiga, H, Zhang, P, Aizawa, S: "β-Catenin in early development of the lancelet embryo indicates specific determination of embryonic polarity"Development, Growth and Differentiation. 44. 467-475 (2002)
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[Publications] Shu, DG.Conway Morris, S, Han, J.Zhang, ZF, Yasui, K, Janvier, P, Chen, L, Zhang, XL, Liu, JN, Li, Y, Liu, HQ: "Head and backbone of the early Cambrian vertebrate Haikouichthys"Nature. 421. 526-529 (2003)
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[Publications] Shu, DG, Conway Morris, S, Zhang, ZF, Liu, JN, Han, J, Chen, L, Zhang, XL, Yasui, K, Li, Y: "A new species of yunnanozoan with implications for deuterostome evolution"Science. 299. 1380-1384 (2003)