Research Abstract |
ミトコンドリアへのタンパク質移行は外膜と内膜の複数の膜透過装置(トランスロケータ)によって担われる。われわれは酵母ゲノム情報をフルに利用し,この1年間で新規トランスロケータ構成因子を4つ発見した。Tom38とTom13はミトコンドリア外膜のタンパク質で,Tom38は既知のトランスロケータSAM/TOB複合体の新因子として,βバレル型タンパク質の外膜へのアセンブリーに関わる。Tom13は既知のトランスロケータとは別の複合体を作り,βバレルタンパク質の一部のヘテロ複合体アセンブリーに関わる。Tim40は膜間部にドメインを持つ内膜の内在性タンパク質で,膜間部のsmall Tim等,可溶性低分子量タンパク質の局在化に関わる。Tim15は内膜のマトリクス側に存在する表在性膜タンパク質で,マトリクスの分子シャペロンHsp70と相互作用し,タンパク質の内膜通過に関わる。これらの因子の機能解析を進めることにより,ミトコンドリアへのタンパク質移行の分子機構がさらに詳細に明らかになることが期待される。 ミトコンドリアタンパク質の移行経路は,外膜のTOM複合体を通過した後,各区画へと経路が分岐する。内膜の複数回膜貫通タンパク質は,TOM複合体通過後,膜間部のsmall Timタンパクの働きにより内膜のTIM22複合体に移行し,TIM22複合体によって内膜に組み込まれると考えられている。そこで内膜の複数回膜貫通タンパク質PiC(リン酸キャリア)の各種欠失変異体を作成し,ミトコンドリアへの移行経路を調べたところ,TIM22経路ではなく,TIM23経路によりマトリクスにまでミスソートされることがわかった。このことは,PiCはTIM23経路に仕分けられるcrypticなシグナルを有することを示しており,TIM22経路とTIM23経路の間の仕分け機構が従来考えられていたより複雑であることを示している。
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