2002 Fiscal Year Annual Research Report
X線吸収分光・光電子分光による遷移金属酸化物の軌道状態の研究
Project/Area Number |
14038215
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
溝川 貴司 東京大学, 大学院・新領域創成科学研究科, 助教授 (90251397)
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Keywords | 光電子分光 / ルテニウム酸化物 / コバルト酸化物 / 軌道状態 / 非制限Hartree-Fock近似 / 自己エネルギー / 軌道秩序 / 電化秩序 |
Research Abstract |
層状perovskite型構造を持つルテニウム酸化物の軌道状態と格子歪みとの関係を非制限Hartree-Fock近似計算を用いて調べた。Ca_<2-x>Sr_xRuO_4では、Ca置換に伴って格子歪みが生じて軌道状態を変化させ、その軌道状態の変化が常磁性金属(Sr_2RuO_4)から反強磁性絶縁体(Ca_2RuO_4)への転移をもたらすことが予測された。また、Ru 4d電子間のクーロン相互作用は1.9eV程度であり、従来の予想に比べて小さいことが示唆された。この計算結果は、Physical Review B誌に掲載された。また、Ca_<2-x>Sr_xRuO_4の単結晶試料を光電子分光によって調べ、表面およびバルクの電子状態を明らかにした。価電子帯の光電子スペクトルを非制限Hartree-Fock近似計算より得られる状態密度と比較した。さらに、クーロン相互作用の2次摂動で得られる自己エネルギーを計算し、自己エネルギー補正によって実験結果をよりよく再現できることが明らかになった。三角格子を持つ層状コバルト酸化物Ca_3Co_4O_9の電子状態を光電子分光で調べた。Co 2P内殻および価電子帯の光電子スペクトルは、コバルトが低スピン状態をとることを示している。低スピン状態のCo^<3+>とCo^<4+>が三角格子上で電荷秩序する可能性を非制限Hartree-Fock近似計算によって調べ、その電荷秩序状態の状態密度と価電子帯の光電子スペクトルを比較した。また、クーロン相互作用の2次摂動で得られる自己エネルギーを計算し、自己エネルギー補正の効果を検討した。Ca_<2-x>Sr_xRuO_4およびCa_3Co_4O_9の光電子分光による研究成果は、平成15年3月の日本物理学会において発表する予定である。
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Research Products
(1 results)