2002 Fiscal Year Annual Research Report
低エネルギー太陽ニュートリノ検出装置のバックグラウンド評価と低減
Project/Area Number |
14039202
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
森山 茂栄 東京大学, 宇宙線研究所, 助手 (50313044)
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Keywords | 中性子束測定 / 高速中性子 / 熱中性子 / 大深度地下 |
Research Abstract |
本年度は、大深度地下である岐阜県神岡町神岡鉱山において環境中世子束を測定した。この実験の目的は、将来低エネルギー太陽ニュートリノの測定や暗黒物質探索を行う際、中性子束がそれらの測定のバックグラウンドになるため、その値を要求される感度で測定し、対策を立てる指針に役立ことにある。中性子束を測定する一つの方法は、ヘリウム3カウンターを使用して熱中性子を測定するものである。我々は直径5cm、長さ44cm、3気圧のカウンターを準備し、熱中性子の測定を行った。その結果、熱中性子束として(7.7+-0.6)x10-6/s/cm2を得た(誤差は統計誤差)。また、10cmの厚さのポリエチレンでカウンターを囲み、熱中性子以外の成分も測定を行った。その際、ポリエチレンの応答関数(A. Aroua et al., Nucl. Instr. Meth. a 321 (1992) 298)を使用し、中性子束スペクトルは1/E(Eは中性子の運動エネルギー)を仮定し、解析を行った。その結果、熱中性子以外の中世子束として、(1.1+-0.1)x10-5/s/cm2を得た(誤差は統計誤差)。これらの測定より、例えば液体キセノンによって低エネルギー太陽ニュートリノを観測する際には熱中性子を10万分の1程度、それ以外の成分を1万分の1程度に下げる必要がある。これはすなわち将来的にその感度で中性子束を測定する必要があることを意味する。 そのような高感度の中性子カウンターとして、カナダのSNO実験で使用されているヘリウム3カウンターを入手することを検討している。彼らのカウンターは、知られているもののうち最もバックグラウンドレベルの低いものである。来年度はその一つを入手し、測定を行う予定である。 さらに高速中性子に対しては、液体シンチレーターの開発を行っている。液体シンチレーターは、その発光波形を観測することにより、高速中性子を弁別することが可能である。また、液体シンチレーターは内部に含まれる自然放射能が極めて少なくできるので、このような測定にも向いている。本年度はプロトタイプを作成し、必要な感度の見積もりと実現可能性を検討している段階である
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