2002 Fiscal Year Annual Research Report
ランタン硫化物系組成傾斜膜を用いた熱電素子の作製とその超高効率放熱基板への応用
Project/Area Number |
14040201
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Research Institution | Muroran Institute of Technology |
Principal Investigator |
平井 伸治 室蘭工業大学, 工学部, 助教授 (10208796)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
上村 揚一郎 物質・材料研究機構, 物質研究所, 特別研究員
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Keywords | ランタン硫化物 / ディップコーティング / CS_2ガス硫化 / 熱電材料 / 相制御 / 放熱板 / ゼーベック効果 / ペルチェ効果 |
Research Abstract |
モル比でLaCl_3・7H_2O : CS(NH_2)_2=2:3の割合でメタノール溶媒に溶かしたアルコール溶液に基板を浸漬し、3mm・s^<-1>の一定速度で引き上げるディップコーティングとその後のCS_2ガスで硫化する硫化処理によりLa_2S_3薄膜を作製した。なお、硫化条件は773〜1073K、3.6ksとした。また、基板には各々同じ表面粗さに調整した石英、ソーダライムガラスの他、Ti、Mo、Ta、Ptの金属基板を用いた。各種基板上に作製した薄膜のXRD結果より、石英基板では973〜1073Kの硫化温度においてβ-La_2S_3の生成が確認されたのに対し、ソーダライムガラス基板では773〜873KにおいてLaS_2、923〜973Kにおいてはβ-La_2S_3からγ-La_2S_3への不可逆変態温度(1573±100K)以下の硫化温度であるにも係わらずγ-La_2S_3単相の生成が確認された。また、LaCl_3・7H_2Oのみのアルコール溶液を用いた場合は、ディップコーティングにおいて基板へのアルコール溶液の濡れ性が不十分であったため、最初に濡れ性が良好なLaCl_3・7H_2O : CS(NH_2)_2=2:3のアルコール溶液に浸漬した後、次にLaCl_3・7H_2Oのみのアルコール溶液に浸漬することにより、β,γ混合相の生成を可能にした。さらに、金属基板の場合は、1073Kの硫化によりMoとPt基板ではβ-La_2S_3単相、TiとTa基板ではβ、γ混合相La_2S_3の生成が確認された。また、薄膜のゼーベック係数は、石英およびガラス基板上においてβ-La_2S_3が確認された薄膜では、従来のβ、γ混合相焼結体と同様、常温付近において-10000μV・K^<-1>超えるゼーベック係数を確認している。この他、従来技術であるp型とn型の熱電材料を組み合わせたペルチェ素子に電流を流すことにより冷却効果を発現させるのに対し、p型またはn型のいずれかの熱電材料を電極で挟み、両電極間を短絡させることにより、外部電力の供給なしに冷却効果を発現させる放熱板の作製を試みた。Bi_2Te_3系p型熱電材料を用い、その両端をはんだにより銅薄電極と接合した。測定は、電極の一方をヒーターを用いて337.0K、他方をペルチェ素子を用いて304.2Kに固定した後、両電極間の開放、短絡を繰り返し、高温側の電極の温度を測定した。初期の開放電圧が6.65mVであったことから温度差は約33Kと見積られた。回路を短絡することで温度が下がり、再び開放することで温度が元に戻ることが確認された。この場合の温度の低下は約1.5Kであった。この結果、試作したモジュールは、温度差によってゼーベック効果により熱電力により電流を発生し、回路を短絡することで熱電材料に電流が流れ、その電流によるペルチェ効果により高温側が冷却されたものと推定した。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] 渡辺恵司, 坂入正敏, 高橋英明, 平井伸治: "ゾル・ゲル法によりSiO_2を被覆したアルミニウムのアノード酸化"表面技術. 54・3. 235-240 (2003)
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[Publications] 佐藤仁則, 平井伸治, 嶋影和宜, 和田健二: "マグネシウム合金へのゾル-ゲル被覆とその耐食性評価"表面技術. 54・2. 131-136 (2003)
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[Publications] 平井伸治, 鈴木邦彦, 嶋影和宜, 西村聡之, 上村揚一郎, 三友 護: "CS_2ガス硫化反応によるγ-Pr_2S_3およびγ-Nd_2S_3粉末の合成と焼結"日本金属学会誌. 67・1. 15-21 (2003)
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[Publications] 佐藤仁則, 平井伸治, 嶋影和宜, 和田健二: "ゾル-ゲル法によるアルミニウム陽極酸化皮膜へのケイ素酸化物被覆とその評価"日本金属学会誌. 66・12. 1362-1368 (2002)
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[Publications] 嶋影和宜, 平井伸治, 玉置 祥: "希硫酸浸出/電解法によるホタテ貝中腸線廃棄物(通称ウロ)からのカドミウムの除去"資源処理技術. 49・3. 413-418 (2002)
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[Publications] 高橋 徹, 高野明富, 斎藤隆之, 長野伸泰, 平井伸治, 嶋影和宜: "共沈法を用いた廃蛍光体スラッジからの赤色蛍光体(Y_2O_3:Eu^<3+>)の合成"資源と素材. 118・5&6. 579-585 (2002)