Research Abstract |
1.個体行動実験:[方法]メダカにトリブチルスズ(TBT)およびPCBsを餌より各1μg/g B.W.の割合で3週間単独および複合投与した。このメダカをガラス製水槽にいれ,側面よりその行動をビデオに記録し,遊泳速度,および水槽を左右に泳ぐ行動(straight swimming;ST)と水槽を回る行動(swimming in circles;SC),停止行動の頻度を計数した。さらに,メダカの存在位置より乱雑さ(エントロピー)を求めた。 [結果]TBTおよびPCBsの単独・複合投与で遊泳速度は変化せず,急性毒性は発現しなかったと考えられた。しかしながら,PCBsの暴露によりSTとSCの頻度が増加し,多動な状態が示唆された。また,TBTは水槽における出現位置のエントロピーを有意に増加させた。 2.群行動試験:[方法]メダカに3週間餌よりPCBs(0,1,5,25,125μg PCBs/g)を魚体重の3%毎日投与した。群行動用水槽にPCBs投与したメダカおよび無投与メダカ3尾を入れ群行動を1時間撮影した。撮影後の行動をカテゴリー分けその頻度と時間を観測した。また衝突回数も記録した。さらに,画像処理装置を用いてswimming velocity (SV),turning angle (TA),nearest neighbor distance(NND)を計算した。加えて,フラクタル次元解析およびウエーブレット解析を行った。 [結果]6尾で群行動する時間は25μg PCBs/g区で対照区に対して23.7%に短縮された。衝突回数も125μg PCBs/g区(31.3)で対照区に比べて増加した(13.3)。画像処理の結果,SVは暴露濃度に依存して低下し,25μg/g PCB区におけるNNDは対照区に比べ126%増加した。フラクタル次元解析の結果,125μg PCBs/g区のTAは有意に増加し,暴露されたメダカが頻繁に遊泳方向を変えていることが明らかとなった。メダカの総個体間距離を求めウエーブレット解析を行った結果,PCBs混成群では17秒および34秒周期で総個体間距離が大きく振動し,フラクタル次元は有意に減少していた。 メダカ脳の解析:[方法]メダカに餌からPCBs mixture,2,2',4,4',5,5'-hexachlorobiphenyl(PCB153)を5 or 25μg/g含む餌を3週間暴露した。このメダカの脳の遺伝子発現の変動を,メダカ脳マイクロアレイを用いて網羅的に解析した。また暴露したメダカの脳内モノアミンを測定した。 [結果]PCBs mixtureとPCB153を暴露した結果,メダカの脳内遺伝子の発現は変動していた。その一つはゼブラフィッシュのthyrotropin releasing hormone(TRH)と高い相同性があり,本遺伝子の発現の変動とメダカの行動異常に関連性が考えられた。脳内モノアミン類の濃度に顕著な差はなかった。
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