Research Abstract |
(1)今年度の研究方法:未経産ICRマウスを交配後,diethylstilbestrol(DES)10μgを妊娠7,10,13,16日に皮下投与した.得られた雄新生子に,出生後3〜7日(ヒトの胎齢3〜4ヵ月に相当)にSesame oil(IUE^*群),ならびにDES0.1μg(IUE+NE^<**>0.1μg群),DES1μg(IUE+NE1μg群),DES10μg(IUE+NE10μg群)を1日1回皮下投与した(^*IUE : in utero exposure,^<**>NE : neonatal exposure).各投与群とも8週齢で組織学的,内分泌学的および分子生物学的に,また,8〜16週齢で妊孕能について検討した.(2)生後3日のICR雄マウスにDESを100μg投与して完全に不妊にした後,6週目より動物を3群に分け,それぞれPBS, PMSG(5IU/日)およびPMSG+ACT(アクチビン,20μg/日)を2週間連続投与し,8および12週齢で未処置未投与群とともに組織学的,走査型電子顕微鏡的および内分泌学的に生殖器系への治療的効果を検討した.(1)Control群で妊孕能100%であったのに対し,胎生期のみのDES投与で60%,さらに新生子期にDESを投与することで著しく低下し,IUE+NE1μgおよび10μg群では妊孕能は認められなかった.胎児・新生子期の短期間DES曝露のみでも,性成熟期において性腺重量,血中FSH, LHおよびテストステロン濃度が低下し,内分泌学的変化のみならず,StAR(steroidogenic acute regulatoly),AR(androgenreceptor),ER(estrogen receptor)α遺伝子の発現量の変化が示され,細胞増殖ならびに精子形成の阻害が引き起こされた.器官形成期および中枢神経系の発達時期におけるDESの曝露は,性成熟期に達してもなおステロイドホルモン合成系および受容体遺伝子の発現に影響を及ぼし,生殖内分泌系の持続的かつ不可逆的破綻を引き起こすことが示された.(2)DESにより精子形成不全になった雄マウスへのACTおよびPMSG投与は,ACTのセルトリ細胞への直接作用のみならず,強力なLH作用によりライディッヒ細胞の増生を促進し,造精機能を回復させた.しかしながら,長期的な視床下部-下垂体の機能回復には至らず,中枢系への不可逆的なダメージが生殖障害機序の大きな要因であることが明らかとなった.
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