2002 Fiscal Year Annual Research Report
L-リシン誘導体の光触媒変換による高純度L-ピペコリン酸の合成
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14044003
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
大谷 文章 北海道大学, 触媒化学研究センター, 教授 (80176924)
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Keywords | 半導体粉末 / 光触媒反応 / 12族元素硫化物 / 硫化水銀 / 天然鉱物 / 辰砂 / ピペコリン酸 / エナンチオ過剰率 |
Research Abstract |
半導体に光を照射したときに生じる励起電子と正孔による還元、酸化反応を光触媒反応とよぶ。酸素の存在下では、これが励起電子と反応して酸化活性種を生じるため、酸化反応が主体となるが、無酸素下では、酸化と還元の両者を利用することができる。ジアミンを基質とするとアミノ基の正孔による酸化、および励起電子による還元の複合プロセスがOne-Potで進行し、水溶液中、室温という温和な反応条件下で環状2級アミンが得られることを見いだした。これを、比較的安価な光学活性原料であるL-(S)-リシンおよびその誘導体に応用すると、ピペコリン酸類を合成できることを報告してきた。しかし、光触媒そのものには立体選択性がない。ここでは、キラル選択性を期待して、不斉な結晶構造をもつ硫化水銀を光触媒とするピペコリン酸合成を試みた。 辰砂(cinnabar)として知られる硫化水銀の天然鉱物(単結晶あるいは双晶)を試料とし、光触媒環化反応によるピペコリン酸の生成系について、その活性を調べたところ、きわめて低いものの光触媒活性をもつことが明らかになった。種々の天然鉱物、あるいは市販硫化水銀粉末を用いてDL-リシンを出発原料とする光触媒反応を行い、反応系に残存するリシンと生成したピペコリン酸の光学純度をキラルカラムを備えたHPLC、あるいは反応後の試料から単離したピペコリン酸を円偏光二色性スペクトルによって分析したところ、誤差範囲を超える光学活性は見いだせなかった。反応速度がきわめて小さく、変化量と生成物量が極端に少ないことがひとつの原因である。一般に天然鉱物は多くの不純物を結晶内に含み、このために光触媒反応の初期活性種である光励起電子と正孔の再結合が速く、実質の化学反応が遅いことが知られている。実際に、使用した硫化水銀鉱物試料の不純物を分析した結果、不純物の総量が多い試料ほど光触媒活性が低いことが明らかになった。
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Research Products
(1 results)
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[Publications] Pal, B., Ikeda, S., Ohtani, B.: "Photoinduced Chemical Reactions on Natural Single Crystals and Synthesized Crystallites of Mercury(II) Sulfide in Aqueous Solution Containing Naturally Occurring Amino Acids"Inorg. Chem.. 42(5). 1518-1524 (2003)