2002 Fiscal Year Annual Research Report
メタラ環状化合物を経る軸不斉ビアリール類の触媒的不斉合成
Project/Area Number |
14044048
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
林 民生 京都大学, 大学院・理学研究科, 教授 (00093295)
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Keywords | 触媒的不斉合成 / クロスカップリング / 軸不斉 / ビナフチル / チオフェン / グリニャール試薬 / ニッケル触媒 |
Research Abstract |
本年度は,これまでに得てきた軸不斉化合物の触媒的不斉合成の知識とノウハウを活かして,ヘテロ元素を含むナフト5員環化合物の不斉開環による軸不斉ビナフチル化合物の触媒的不斉合成を目指した.炭素(sp2)-イオウ結合が低原子価の遷移金属により切断されること,またチオフェンがクロスカップリング反応の基質となることなどの知見を基に架橋ヘテロ元素としてイオウを採用した.不斉配位子,溶媒などの反応条件を検討した結果,不斉配位子としてオキサゾリン-ホスフィン(L^*),触媒前駆体としてNi(cod)_2,を用いてジナフトチオフェンとアリールグリニャール試薬との反応をTHF中で行うと,イオウ-炭素結合の開裂と新たな炭素-炭素結合の形成が進み,クロスカップリング生成物としてビナフチルチオールが定量的な収率で得られた.エナンチオ選択性は極めて高く,p-トリルおよびフェニルグリニャール試薬は95%eeの生成物を与えた.従来の不斉クロスカップリングに高選択的な不斉配位子として用いられたフェロセニルホスフィンやbinapではエナンチオ選択性は低い.この触媒的な不斉クロスカップリング反応は0価ニッケルにチオフェンが酸化的付加して発生するニッケルとイオウを含む多元素環状化合物中間体を経て進行するものと考えられる.この環状化合物中間体はその後グリニャール試薬との反応(トランスメタル化)によりジオルガノニッケル中間体を経て還元的脱離によりクロスカップリング生成物を与え,0価ニッケルを再生する.用いるグリニャール試薬によりエナンチオ選択性が大きく変動することなどから,生成物の立体化学はトランスメタル化より後ろの段階で決定されているものと考えられる.
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Research Products
(1 results)