2002 Fiscal Year Annual Research Report
水素結合とロイシンジッパーの強相間によって形成される低分子フィルムの階層構造制御
Project/Area Number |
14045208
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
山田 哲弘 千葉大学, 教育学部, 助教授 (40182547)
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Keywords | 超分子ポリマー / ロイシンジッパー / 多重水素結合 / ペプチド型両親媒性分子 / キャストフィルム / 柔粘性結晶 / 強相関ソフトマテリアル / 階層構造 |
Research Abstract |
アミノ酸の一種であるロイシンが3つ連鎖したユニット(-Leu-Leu-Leu-)を導入すると、二鎖型両親媒性アンモニウム塩はクロロホルム溶液を剥離加工紙上に展開して風乾するだけで柔軟なフィルムになる。この超分子フィルムは、平行β-シートがロイシンジッパーで固定された構造を有すると考えられる。この場合、ロイシンジッパーはβ-シート間に形成されるもので、水素結合に先んじて形成されるものではない。つまり水素結合形成とロイシンジッパー形成は階層性を持ち、かつ強相関している。本研究は、この階層性を制御してフィルムの性質をコントロールしようとするものである。本年度は、ロイシン数を2〜4とした分子を合成し、柔軟なフィルムがロイシン数3個と4個の分子のみから得られ、ロイシンジッパー形成能を持たないロイシン2個の分子は脆いフィルムしか作らないことを明らかにした。このことは上位の階層にあるロイシンジッパーがフィルムの柔軟性を決定していることを示す。また、ロイシン4個の分子は作製後のキャストフィルムを60〜70℃で熱処理することにより、初めて柔軟性を示した。この点について構造上の変化は明らかにしていないが、ロイシン数の増加によって水素結合強度は向上したため、作製直後のフィルムが脆いのは低階層の水素結合がフィルムの結晶性を高めたためと考えられる。一方、熱処理によって柔軟性を示すのは、アルキル鎖が融解し、一種の柔粘性結晶に変化したものと考えられる。これらの結果より、低階層にある作用を制御することで、素材の物性をコントロールする糸口が得られている。
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