2002 Fiscal Year Annual Research Report
金属錯体を基本骨格とする光感応性ヘテロナノ構造体を用いた多重機能の探索
Project/Area Number |
14050063
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
川田 知 大阪大学, 大学院・理学研究科, 助教授 (10211864)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
海崎 純男 大阪大学, 大学院・理学研究科, 教授 (20089874)
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Keywords | 集積型金属錯体 / 層間化合物 / クロラニル酸 |
Research Abstract |
我々はこれまでに配位子にクロラニル酸、中心金属に様々な酸化状態をとる鉄を用い、ゲスト分子としてフェナジン(1)、フェロセン(2)を導入した集積体の構造を明らかにしている。これらは、単核錯体が水素結合でつながれた二次元層間に、ゲスト分子をカラム状に取り込んだ構造をもつ。その層間距離は、ゲスト分子の大きさによって異なり、鉄-クロラニル酸錯体ホスト層は、ゲスト分子の大きさに応じて柔軟に層間距離を変化させてゲスト分子を包接できる可能性が示唆された。そこで、かさ高いデカメチルフェロセン([Fe(Cp^*)_2])、特異的な酸化状態を持つテトラチアフルバレン(TTF)をゲスト分子として層間化合物の合成を試みたところ、{[Fe(Cp^*)_2][Fe(CA)_2(H_2O)_2]}(3)及び{(TTF)_2[Fe(CA)_2(H_2O)_2]}(4)を得ることに成功した。これらの集積構造は、1と2と同様に層状を示した。ゲスト分子はカラム状に整列し、大きく広がったホスト層間に取り込まれており、このホスト層は、層間距離、層内の錯体配列を柔軟に変化させることで、様々な大きさのゲスト分子を容易に取り込むことが明らかとなった。さらに、その化学量論比からゲスト分子は酸化され層間に挿入されることが推定された。メスバウアースペクトルより、1、3では、ホスト層内の鉄イオンは全て3価であった。しかし、4においては、層内の鉄イオンは2価と3価が1:1で存在することが示され、混合原子価状態であることが明らかとなった。また、ラマンスペクトルより、4のカラム内のTTFの酸化状態は0.75+であることが示され、ゲストは酸化され層間に取り込まれるが、必ずしもその酸化数は整数にはならず、ホスト層により、安定な酸化状態に導かれることが推定される。以上より、鉄-クロラニル酸錯体から形成されるホスト層は、集積構造と電子構造を柔軟に変化することで様々な機能性分子の導入を可能とする物質相であることが示された。
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Research Products
(4 results)
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[Publications] S.Kawata: "Proton-transfer-mediated crystal engineering using 1,4,5,6-tetraphydro-5,6-dioxo-2,3-pyrazinedicarbonitrile with 4,4'-bipyridine"CrystEngGomm. 4・81. 496-498 (2002)
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[Publications] M.K.Kabir: "cis-Bis(amidinothioureato-k2N, N') nickel(II)"Acta Cryst.. E58. m580-m582 (2002)
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[Publications] M.Katada: "Moessbauer Spectroscopic Studies of(Me_2NH_2)_2SnX_6(X=Cl or Br)"Z.Naturforsch. 57a. 607-612 (2002)
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[Publications] K.Nagayoshi: "Design of Novel Inorganic-Organic Hybrid Materials Based on Iron-Chloranilate Mononuclear Complexes : Characteristics of Hydrogen Bond-Supported Layers toward the Intercalation of Guests"J.Am.Chem.Soc.. 125・1. 221-232 (2003)