2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14050089
|
Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
栄長 泰明 慶應義塾大学, 理工学部, 講師 (00322066)
|
Keywords | 光機能性材料 / 分子磁性 / 分子集合体 / マトリックス単離 / フォトクロミック材料 |
Research Abstract |
光照射により磁気特性、金属のスピン状態のスイッチングが可能な固体物質の開発が盛んに行われており、このような光スイッチング機能発現のために、これまでにプルシアンブルー類似体を基本にした分子設計、分子間相互作用を利用できる配位子を用いる分子設計、などの戦略が用いられてきた。本研究では、そのような材料開発の新戦略の提示を目標としており、初めに二つの概念を提示し、その効果と可能性について検討したところ、それぞれにおいて成果を得た。 高分子マトリックスとしてPMMA(ポリメタクリル酸メチル)を用い、CCl_4とフェロセン(Cp_2Fe)を含む高分子フィルムを作製した。この試料に、低温(8K)で紫外光照射を行うと、溶液中での光化学反応と同様に、CCl_4とCp_2Feの電荷移動遷移の励起による酸化反応が起こり、フェリシニウムイオンが生成する。ところがこの固相においては、光照射を続けると(10時間)、高スピン状態をとるCp_2Feの異性体を観測することに成功した。SQUIDによる磁化率測定を行ったところやはり光照射によるスピン量の増大が観測でき、この手法が新たな光誘起スピン転移実現の戦略として有効であることが示された。 さらに、ミセル、脂質二分子膜、単分子膜などの組織化した有機分子自己集合体の光機能を利用して、無機磁性材料の磁気特性を制御するというような新規な光機能システムの構築に関する研究はまだ始まったばかりである。我々はその先駆けとして、アゾベンゼンを含むベシクル中にプルシアンブルー磁性体を複合し、光照射により可逆に磁気特性を制御することに成功している。この背景を利用し、アゾベンゼンのみでベシクルを形成する複合体を作製することにより、光による磁性のスイッチング幅をこの例の10倍にも増大させることや、スピロピランベシクルに酸化鉄微粒子を複合し、光照射により室温にて磁化を増大させることに成功した。さらに、アゾ基の高い配向性を利用した新規なシステムとして、層状の粘土を含むアゾベンゼンLB膜を作製し、やはりプルシアンブルー磁性体を複合した系の作製とその物性評価を試みた。その結果、低温において紫外・可視光照射を行うと、アゾ基のシス-トランス光異性化に伴って、2Kにおける磁化の減少-増大が観測され、この光スイッチング幅は、10%以上の高効率を示した。
|
Research Products
(5 results)
-
[Publications] 角崎健太郎, 栄長泰明, Tata N.Rao, 藤嶋昭: "Fabrication and Electrochemical Characterization of Boron-Doped Diamond Microdisc Array Electrodes"Chemistry Letters. 502-503 (2002)
-
[Publications] 栄長泰明, 山本崇史, 須貝威, 佐藤治: "Reversible Photo-controllable Vesicles Consisting of Azobenzene"Chemistry of Materials. 14. 4846-4850 (2002)
-
[Publications] 速水真也, 佐藤治, 井上克也, 栄長泰明, 前田米蔵: "Thermal and Optical Switching of Iron(III) Complexes"Journal of Nuclear Radiochemical.Science. 3. A1-A9 (2002)
-
[Publications] 栄長泰明, 田口実, 李光明, 秋津貴城, 顧忠沢, 須貝威, 佐藤治: "Magnetization Increase of Iron Oxide by the Photo-induced Aggregation of Spirophyran"Chemistry of Materials. 15. 8-10 (2003)
-
[Publications] 佐藤治, 速水真也, 栄長泰明, 顧忠沢: "Control of the Magnetic and Optical Properties in Molecular Compounds by Electrochemical, Photochemical and Chemical Methods"Bulletin of Chemical Society of Japan. 77(発行予定). (2003)