2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14077213
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
首藤 啓 東京都立大学, 大学院・理学研究科, 助教授 (60206258)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田中 篤司 東京都立大学, 大学院・理学研究科, 助手 (20323264)
高見 利也 自然科学研究機構, 分子科学研究所, 助手 (10270472)
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Keywords | 強光子場 / 複素半古典論 / 量子カオス / 多次元トンネル現象 / 非断熱遷移 / ストークス現象 |
Research Abstract |
本年度,我々は強レーザー場中における原子のイオン化の2つの機構,トンネルイオン化とカオス的イオン化のクロスオーバーを半古典論の立場から説明することを目的として研究を進めてきた.我々の取り組んだ問題は以下の通りである.トンネルイオン化の機構がケルディッシュ型理論[1]により説明されることはよく知られている.とくに,このイオン化における非摂動論的側面は再散乱モデルによりよく記述される[2]. しかしこの理論の枠内では,振動外場の下での原子内電子の古典力学がカオス的であることを明示的に取り込むことはできない.実際,量子軌道-再散乱モデルにおいて,散乱行列に主要な寄与をもたらすファインマン経路を表す-の振る舞いはつねに規則的である[2].よって,カオス的イオン化のように,カオスとイオン化機構とが本質的に結びついている場合への適用が可能な,ケルディッシュ理論を包含する新しいイオン化理論を定式化する必要がある. 我々の得た結果は以下の通り[(1)〜(3)]である. (1)トンネルイオン化およびカオス的イオン化を実現するモデルを構築した. (2)同モデルに対し,散乱行列の半古典表式を得た. 我々の半古典的方法では散乱行列への主要な寄与をもたらすファインマン経路は複素古典軌道により表される.このことにより,古典力学がカオス的であることが軌道の振る舞いを通じて行列要素に明示的に関係付けられる.また,我々のモデルは以下の意味において,再散乱モデルの一般化となっている. (3)我々のモデルにおいて,量子軌道は特別な複素古典軌道として現れることがわかった.このことにより,トンネルイオン化の過程とカオス的イオン化の過程を明確に区別することができ,また量子軌道の振る舞いを非線形動力学の立場から議論することができるようになった.以上の結果より,我々は新しいイオン化理論を定式化する前段階として,トンネルイオン化とカオス的イオン化のクロスオーバーを解析するための半古典的手段を得た.
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Research Products
(4 results)