2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14078217
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
光藤 武明 京都大学, 工学研究科, 教授 (90026344)
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Keywords | ルテニウム錯体 / フェノール / オキソシクロヘキサジエニル / ペンタレン / 水錯体 / キラル / 動的挙動 / 光学分割 |
Research Abstract |
1.0価ルテニウム錯体とフェノールとの反応による新規2価ルテニウムフェノラート錯体の合成 まず、当研究室で初めて合成した0価ルテニウム錯体、Ru(η^6-cot)(dmfm)_2(1)[cot=1,3,5-cyclooctatriene, dmfm=dimethyl fumarate]とフェノールとの反応を110℃で3時間行うことにより、η^5-シクロオクタジエニル配位子を有する新規2価ルテニウムフェノラート錯体(2.Ru(η^5-C_8H_<11>)(η^5-C_6H_5O)が収率74%で得られた。一方、反応温度130℃では、錯体2中のη^5-シクロオクタジエニル配位子が脱水素渡環したη^5-ペンタレニル配位子を有する新規フェノラート錯体(3,Ru(η^5-C_8H_9)(η^5-C_6H_5O))が収率76%で得られた。錯体3は、錯体1から錯体2を経由して生成している。錯体2、3の構造は単結晶X線構造解析により決定した。その結果、錯体2および3中のフェノラート配位子は、η^5-オキソシクロヘキサジエニル配位子とみなした方が適切であり、この構造はIR、^<13>C NMR、ならびにDFT計算からも支持された。 2.水配位0価ルテニウム錯体の合成:不斉環境にある水分子 我々は、既に安定に単離できる0価ルテニウムアクア錯体、Ru(dmfm)_2(dppe)(H_2O)(4)の合成法について報告したが、本研究では、錯体(4)の構造について詳細な検討を行い、温度可変^1H NMR測定により配位した水分子の動的挙動を明らかにした。錯体(4)中の水分子は、酸素原子の二つの非共有電子対の一方でルテニウムに配位し、二つの水素原子は、それぞれdmfm配位子のエステルカルボニル基と水素結合により繋がっている。この二つのカルボニル基は非等価であることから、水素結合を介して水分子の二つの水素原子も非等価となり、従って水の酸素原子はキラル中心となっている。ラセミの錯体4は自然分晶により、またはキラルカラムを備えたHPLCでの分離により光学分割可能であり、単結晶X線構造解析によってそれぞれのエナンチオマーの絶対構造を明らかにした。錯体4の水分子は、固体状態では固定されているが、溶液中では特異な動的挙動を示す。CD_2Cl_2中、錯体4の水分子のプロトンは25℃で1本の幅広いシングレットとしてδ4.68ppmに観測されるが、-60〜-70℃で2本に分裂した。これは配位した水分子の回転と反転による2個の水素原子問の位置交換を実験的に初めて観測したものである。
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Research Products
(7 results)