2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14078221
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
榊 茂好 京都大学, 工学研究科, 教授 (20094013)
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Keywords | 電子状態理論 / 錯体触媒反応 / 遷移状 / 動的挙動 / シリル錯体 / 前周期遷移金属錯体 / 後周期遷移金属錯体 |
Research Abstract |
遷移金属錯体の動的挙動の本質と制御を目的に、いくつかの興味深い金属錯体の反応過程と構造についてDFT法およびMP2-MP4法を用いた電子状態計算による理論的研究を行った。それらの成果は以下のとおりである。Ti, Zrなどの前周期遷移金属錯体によるアルキンのカップリング反応は非対称的な遷移状態構造を経て、非常に容易に進行する。それに対して後周期遷移金属錯体によるカップリング反応は対称的な遷移状態構造を経て進行し、相当高い活性障壁を必要とする。また、反応熱にも大きな相違があり、前者の反応は発熱性が大きい。このカップリング反応には金属部分からアルキンへの電荷移動が重要であること、前周期および後周期遷移金属錯体の大きな相違は前周期遷移金属のd軌道が後周期遷移金属のそれに比べて軌道エネルギーが高いためであることが明らかとなった。また、PdおよびPtのシリルヒドリド架橋二核錯体の構造と結合性に関する理論的研究を行い、共存配位子が単座ホスフィンの場合は、シリル・ヒドリド架橋構造とシラン架橋構造が同程度の安定性で存在し、それらがわずかの活性障壁で相互変換を容易にすること、しかし、キレートボスフィンが共存配位子として存在する場合はシリル・ヒドリド構造が安定であり、シラン架橋構造は遷移状態になること、この相違はボスフィン配位子とd軌道の相互作用で理解出来る事を明らかにした。このように、配位子のわずかな相違が、金属錯体の動的挙動を左右することは、従来に無い結果であり、動的錯体制御の観点から興味深い。
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Research Products
(7 results)