Research Abstract |
2004年4月30日〜9月30日の期間,ヤクーツク近郊のネレゲル(62°19'N,129°31'E)のカラマツ林および伐採跡地において,フラックスの長期観測をおこなった。カラマツ林は平均樹高8m,樹幹密度2100ha^<-1>の成熟林で,樹種はLarix gmerliniiのほぼ純林,林床植生はコケモモ,ミズゴケなどである。カラマツ林には高さ21m,伐採跡地には高さ6mのタワーを建設し,各種測器を設置した。2004年は5月から8月上旬まで,他の年より日射量が少なかったが,8月下旬から9月は逆に多かった。気温も5月から8月上旬までの期間,7月上旬を除いて低く,特に7月下旬と8月上旬に非常に低かったが,8月下旬から9月は高かった。5ヶ月間の総雨量は118.0mmと平年並みであったが,7月下旬と8月上旬に集中した。カラマツ林の日射透過率の平均は落葉期で0.4,着葉期で0.27であった。透過率の季節変化から,6月上旬にカラマツが開葉し,9月中旬に落葉したことがわかる。平年と比較すると,2004年は開葉,落葉ともに半月遅く,これは5月下旬の低温,8月下旬から9月の高温,高い土壌水分によると考えられる。着葉期のアルベドは,カラマツ林で0.10,伐採跡地で0.17であった。正味放射量はアルベドの大小を反映して,伐採跡地よりカラマツ林が大きかった。カラマツ林床における正味放射量は,樹冠上の平均35%であった。二酸化炭素の吸収観測では、カラマツ林では6月上旬から9月中旬が吸収期であり,吸収のピークは例年6月に現れるのに対して,2004年は7月がピークであった。また2004年は,9月の月間収支が初めて吸収になった。これらは気象状況によってカラマツ樹の生長期が遅くシフトし,吸収最盛期が7月,落葉期が9月中旬となったためである。伐採跡地では表面植生の回復に伴って,夏季の吸収量が前年よりさらに増加した。吸収のピークは,7月末であった。カラマツ林床では,期間を通して放出であり,そのピークは地温が最高となる8月であった。
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