2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14102012
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
酒井 広文 東京大学, 大学院・理学系研究科, 助教授 (20322034)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
籔下 篤史 東京大学, 大学院・理学系研究科, 助手 (20376536)
峰本 紳一郎 東京大学, 大学院理学系研究科, 助手 (90323493)
|
Keywords | 非同軸光パラメトリック増幅 / キャリアエンベロープ位相(CEP) / 可視-近赤外領域 / 配列または配向した分子 / 高次高調波発生 / コヒーレント真空紫外光 / アト秒パルスの発生と計測 / 偏光ゲート法 |
Research Abstract |
1.可視-近赤外領域での研究実績は以下のとおりである。 非同軸光パラメトリック増幅法(NOPA)を開発し、NOPAを用いた可視光超短パルスの発生に成功した。これにより超高速実時間分光が可能になり、3000cm^<-1>の高周波数に至るまでのさまざまな分子振動の測定と解析が可能になった。またこの超短パルスが持つ広帯域なスペクトル領域に対する測定を行うために、独自に開発したマルチ(128ch)・ダブルロックインアンプとその分光システムを用いた。従来、ロックインアンプと波長掃引分光器を用いて、1点1点の波長において順に測定していたものが、可視光超短パルスの持つスペクトル領域全域を覆う128点全ての波長において同時検出を行うことが可能になるため、同じ測定時間では10倍以上のS/N向上、同じS/Nではパラメータを連続的に変化させての2次元分光が可能になった。スチルベンを試料とした測定を行い、その超高速な光異性化に関わる興味深い現象が観測された。この現象に関する測定の精度をより上げるため、さらに追実験を進めている。 2.真空紫外領域での研究実績は以下のとおりである。 (1)非断熱的に配列した分子(N_2,O_2,およびCO_2)を試料とし、高次高調波発生の楕円率依存性を測定した。分子軸と楕円の長軸が平行のときと垂直のときとで楕円率依存性が異なり、平行なときの方が垂直なときよりも楕円率の増大とともに高調波強度が早く減少することを明らかにした。このことは分子軌道の形状から直感的に予想される結果と一致するが、新たに開発した理論モデルで説明することに成功した。また、再結合過程におけるdestructive interferenceの効果を楕円率依存性に対して観測することにも初めて成功した。具体的には、N_2分子の31次高調波について分子軸と楕円の長軸が平行なときの楕円率依存性において、直線偏光(楕円率ε〜0)のときに明瞭なディップが現れることを観測した。 (2)配列した分子試料を用い、フェムト秒レーザーパルスのピーク強度付近でのみ直線偏光となるパルスを用いて、高次高調波の発生特性を調べた。偏光ゲート法と呼ばれるこの手法を用い、将来(絶対位相の制御された)数サイクルパルスを基本波としてアト秒パルスを発生させるために必要な重要な知見を得ることができた。配列した分子に偏光ゲート法を適用することにより、アト秒パルスのパルス幅や偏光特性の制御ができるばかりでなく、分子内電子のダイナミクスをアト秒精度で制御する技術につながると期待される。
|
Research Products
(5 results)