Research Abstract |
平成18年度の研究実績の概要は以下のとおりである. Bi系銀シース線材に曲げ歪み,引張り応力を加えて交流損失を測定した.曲げ歪みに対し,線材の臨界電流J_Cは劣化する.しかし,I_cの劣化が10%程度以内であれば,劣化したI_cの値により損失を正規化すれば,曲げ歪みのない線材で測定した交流損失値を正規化したものと良く合うことがわかた. 低コスト線材として期待されている配向性磁性基板薄膜超伝導線材に関し,2本の磁性基板を基板側が背中合わせになるように貼り合わせることによる磁性基板の影響をなくし,通電損失が非磁性基板並に低減できることを明らかにした.さらに,磁性基板導体において導体テープ面に垂直な外部交流磁界に対する磁化損失が非磁性基板線材と同等であることを明らかにし,分割化による損失低減効果も非磁性基板線材と同様にあることを示した. 薄膜超伝導線材におけるツイストマルチフィラメント構造の損失低減効果について、電磁界解析モデルを構築し計算機シミュレーションを行い,定量的に明らかにし,50Hz横磁界に対する磁化損失は十分低減可能であることを示した. 高温超伝導集合導体の交流通電損失評価法の数値解析を行い,測定結果との比較を行い,提案する測定法の妥当性を示した.また,線材配置が交流損失に与える影響について実験と数値解析を組み合わせ,損失を定量的に評価できるようになった. 単層ならびに多層超伝導ケーブル導体の電磁界解析を行い交流損失を算定できるようになった,また,3相同軸型ケーブルの電流分布と交流損失を解析するモデルを構築し,交流損失を最小化するケーブル構造について検討し,ケーブルの撚りピッチを調整して各超伝導層の電流分配比を調整することにより,一定の運転電流で損失を最小にできることが示された. 交流損失の最小化に基づく高温超伝導巻線の巻線断面形状の最適化設計について理論的に検討した.その結果,一般の長方形断面のコイルに較べて,交流損失を40%程度低減できることを示した. 以上,線材から集合導体,巻線まで,統合的に損失を低減する方法の基礎を得ることができた. 本研究計画の最終年度に当たり,研究成果を集大成した報告書の作成を開始した.
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