2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14103005
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小林 昭子 東京大学, 大学院・理学系研究科, 教授 (50011705)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤原 絵美子 東京大学, 大学院・理学系研究科, 助手 (30361562)
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Keywords | 単一成分分子性金属 / 拡張型ジチオレン錯体 / 粉末X線回折 / 分子性伝導体 |
Research Abstract |
1)拡張型TTF骨格の配位子部のSを部分的にSeに置換した単一分子性伝導体 本年は拡張型TTF骨格の配位子部のSを部分的にSeに置換した[M(tmstfdt)_2](M=Ni, Au ; tmstfdt=trimethylenediselenadithiathiafulvalenedithiolate)と("Bu_4N)[Ni(dmstfdt)_2](dmstfdt=dimethyldiselenadithiafulvalenedithiolate)を新たに合成した。[M(tmstfdt)_2](M=Ni, Au)の結晶構造はSPring-8の放射光を用いたX線粉末回折実験によって、[M(tmdt)_2](M=Ni, Au)と同形であることがわかり、MEM/Rietveld方により決定された。粉末ペレットで測定した電気伝導度はNi錯体では室温で100Scm^<-1>で50Kまで金属的な温度依存性を示した。50K以下4Kまでの伝導度の上昇は極めてわずかであった。磁化率は室温でそれぞれ1.77×10^<-4>emu mol^<-1>で,50K以上ではPauli常磁性的であった。金錯体[Au(tmstfdt)_2]は粉末ペレットで測定した室温における伝導度は11Scm^<-1>、活性化エネルギーは16meVで、磁化率は2.99×10^<-4>emu mol^<-1>であった。("Bu_4N)[Ni(dmstfd)_2]の伝導度は室温で0.14Scm^<-1>,Ea=17meVの半導体で、150K付近で絶縁化する。磁化率は150KまでCurie-Weiss則にのる局在スピンが存在し30K付近で反強磁性転移をする。この錯体の電子状態はスピン・電荷分離の観点から極めて興味深い。 2)拡張型TTF骨格の配位子を有するジチオラト亜塩錯体 中心金属原子を磁性原子に置き換えた中性単一成分分子を集積し、金属結晶を構築できれば、転移温度が高い磁性金属となる可能性が期待できる。このような考えの基に[Cu(dmdt)_2]を合成したところ、常磁性金属が得られた。逆にZn^<2+>の電子構造は3d^<10>で閉殻構造を持つため亜塩の錯体は磁性のないひずみの少ない構造が期待される。そこで本年は[Zn(tmdt)_2]を合成し、SPring-8の放射光を用いたX線粉末回折によりその構造を調べたところ、[Cu(dmdt)_2](dmdt=dimethyltetrathiafulvalenedithiolate)と同様な構造をとることが分かった。Znの回りの配位状況は四面体的で、二つの配位子のなす角度は理想的な正四面体角に近く89.6度であった。伝導度は粉末ペレットで測定し室温で10^<-2>Scm^<-1>、活性化エネルギーは146meVで、半導体的であった。また磁化率測定から、非磁性であることがわかった。以上のように銅錯体と亜鉛錯体はd電子一個異なるだけで、極めて異なる物性を示す。詳しい電子状態の計算によりこの相違を明らかにすることを目指している。
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Research Products
(6 results)