2004 Fiscal Year Annual Research Report
教師の「ディスカッション教育」技能の開発と教育支援システム作り
Project/Area Number |
14201016
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Research Institution | KYUSHU UNIVERSITY |
Principal Investigator |
丸野 俊一 九州大学, 人間環境学研究院, 教授 (30101009)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
加藤 和生 九州大学, 人間環境学研究院, 助教授 (00281759)
綿巻 徹 長崎県立シーボルト大学, 看護学部, 教授 (70142172)
仮屋園 昭彦 鹿児島大学, 教育学部, 助教授 (30274674)
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Keywords | 対話型授業 / 対話を育むグランドルール / 対話空間を支えるリボイシング / 実践知の可視化 / 状況依存的 / 素朴な発達モデル |
Research Abstract |
16年度は、次の3つの観点から、このテーマに関して理論的及び実践的研究を行った。 1対話空間を支えるグランドルールの解析と実践:対話を中心とした授業実践の観察を通して、子どもが自由にかつ創造的に対話を生成していくためには、次のようなグランドルール作りが重要である:1)一人一人の違った考えや意見を認め合う、2)正解か否かを気にせず、何でも自由に発言できる、3)互いの考えや意見を最後まで聴く、4)互いに助け合い励まし合う、5)話す前によく考える、6)理由や根拠をもって質問する、説明する、7)皆が納得できるまで話し合う、8)必要な情報は共有する、9)一定の結論を出す前に他の可能性を考える、10)グループ全体で責任を持つ、11)互いの考えや意見を繋ぎ合わせる、12)他者の考えに関心するだけでなく批判や反論はないか挑戦してみる、13)納得できるまで自分の考えにこだわってみる、14)互いの考えの良い所悪い所を指摘し合う。またこうしたグランドルールは実践の文脈の中に埋め込まれているだけに、教師は容易に可視化できにくい。教師がグランドルールを意識化しながら、対話型授業を実践することによって、子どもたちは主体的、創造的に授業に参加し、相互の考えを発展させるような知的営みを繰り返し、新たな自己発見や他者発見を行っていく。さらに子ども達に対話を育むグランドルールを教える時には、それら一つ一つをスキルとして取り上げて教えるのではなく、具体的な内容と必然性のある文脈の中で教えていくことが重要であることを見いだした。 2)対話空間を支える重要な教授スキルとしてのリボイシング(revoicing):熟達した実践家(教師)は、タイミング良く状況依存的にリボイシングを使用しながら対話を生成させていることが分かった。リボイシングとは、生徒の発言を取り上げ、その発言の不十分な所を補完したり、意味を明確化させたり、異なる視点から考えるような問題を新たに提示したりする営みを含む、「言い直し」という生徒の声の取り上げ方である。これは、発言した子どもの思考が明確になるだけでなく、クラス全体にその声の意味するものが投げ返されることによって再び対話が活性化するような機能をもつ教授スキルである。対話が生成される授業実践の中では、即興的に教師がリボイシングを行っていることは分かった。 3)「ディスカッション技能」に関する教授の素朴な発達モデル:対話を生成するのに必要不可欠な、「聴く力」「話す力」「つなげる力(かかわり合う)」がどのように発達していくか、またそれらをどの段階でどのように実践していくべきかについての現場教師の素朴な発達モデルを抽出し、そのモデルを踏まえた教育実践プログラムの開発を行った。
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Research Products
(11 results)