2002 Fiscal Year Annual Research Report
禅宗寺院文書の古文書学的研究-宗教史と史料論のはざま-
Project/Area Number |
14201031
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
保立 道久 東京大学, 史料編さん所, 教授 (70092327)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山家 浩樹 東京大学, 史料編さん所, 助教授 (60191467)
田中 博美 東京大学, 史料編さん所, 助教授 (60111572)
林 譲 東京大学, 史料編さん所, 教授 (00164971)
末柄 豊 東京大学, 史料編さん所, 助手 (70251478)
原田 正俊 高野山大学, 文学部, 助教授 (40278883)
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Keywords | 禅宗 / 古文書 / 紙 / 紙質 / 葬送 / 室町幕府 / 禅籍 / 壇紙 |
Research Abstract |
研究発表の項目にまとめられているように、本年度の研究においては、鎌倉・室町幕府と等持院・景愛寺・高野山金剛三昧院などの諸禅宗寺院との密接な関係、そこにおける都市的な葬送や納骨の位置、(上記寺院以外に、大徳寺・円覚寺など)、さらに室町幕府の財政機構と密接な連関をもつ禅僧の徴税能力なるものの実態など、鎌倉・室町幕府の「禅宗国家」的な都市的特徴を、多様な側面から再検討することに成功した。これらの研究の中で、禅宗寺院古文書あるいは禅籍・清規などの史料論的研究も進展している。また、大徳寺文書の大量借用にともなう文書原本の紙質調査と紙質研究については、大徳寺の御理解をえて無事、文書を借用し、大量の中世文書を原本にもとづいて調査するという稀有の条件を最大限に利用するために、従来の研究を中心的に担っていた科研グループ(平成6年度補助金「古文書原本にみる材質の地域的特質・時代的変遷に関する基礎的研究」、代表、富田正弘富山大学教授)の意見をいただく機会をえて、現在の段階でもっとも妥当と考えられる料紙調査カードを作成した。また高知県立紙産業技術センターにおいて自然科学的な料紙分析の視点とのすりあわせを行い、あわせて、基礎知識をえるための研修を行った。これによって、文書の法量・重量・繊維組成・簀目・密度・折りその他についての情報も集積し、中世の最上級の料紙としての「引合」を王家・親王家関係の文書に確認し、檀紙・強杉原についても同じく相当数を確認した。また、『大日本古文書大徳寺文書』(4冊)、『鹿王院文書』の入力を終了し、これによって、禅宗寺院文書のフルテキスト入力による新たな研究の可能性をひらいた。禅宗寺院文書の古文書学的研究と都市に拠点をおいた「禅宗国家」論の研究を進展させるという当初の研究目的は、順調に進展している。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] 山家 浩樹: "如大縁由の寺院と室町幕府"禅文化研究所紀要. 26. 561-579 (2002)
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[Publications] 川本 慎自: "禅僧の荘園経営をめぐる知識形成と儒学学習"史学雑誌. 112編1号. 59-75 (2003)
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[Publications] 保立 道久: "中世都市鎌倉と死の世界"高志書院. 249 (2002)
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[Publications] 原田 正俊: "中世の寺院体制と社会"吉川弘文館. 330 (2002)
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[Publications] 原田 正俊: "仏法の文化史"吉川弘文館. 302 (2003)
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[Publications] 田中 博美: "中国禅僧列伝"淡交社. 255 (2003)