2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14202008
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
渥美 東洋 中央大学, 総合政策学部, 教授 (50055141)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宮島 里史 桐蔭横浜大学, 法学部, 助教授
中野目 善則 中央大学, 法学部, 教授 (70211430)
椎橋 隆幸 中央大学, 法学部, 教授 (80041101)
小木曽 綾 駒澤大学, 法学部, 助教授 (50286689)
堤 和通 中央大学, 総合政策学部, 助教授 (70256022)
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Keywords | 少年法制 / restorative justice / 責任自覚・責任履行 / ガヴァナンス論 / モラル・センス / 生活スキル |
Research Abstract |
今年度は、欧米各国で進んでいる少年法制の新しい試みのと典型的なプログラムを若干立ち入って考察することで、第一に、来年度以降の比較法による調査研究と日本の法運用評価の基点を明確にし、第二に、心理学、精神医学という法学から見た隣接領域の参加者と法学専攻者間の、共通の認識と問題意識を確立することに焦点をあわせた。欧米の新動向を支える概念であるRestorative Justiceの理解とそれを反映する種々のプログラムが、ジョン・オースティン流の近代法概念からの離脱と、量的な刑罰としての収容刑の限界、並びに、国親思想と科学主義による収容施設での社会復帰プログラムの限界の自覚を共通にするものであり、犯罪少年・非行少年の具体的な責任自覚と履行、被害者の保護、並びに、紛争解決と処遇へのコミュニティの関与を中核の要素としている。本研究の基点になるこのような理解は、米国司法省OJJDPのプログラムであるBARJ(Balanced and Restorative Jusice)、ABC(Accountability Based Community Initiatives)のモデル・サイトであるペンシルヴェイニア州Allegheny Countyの実施プログラムとRestorative Justiceの推進団体であるRealJustice等が集積している各国プログラムについての大量の調査結果等を考察する中で、共有するにいたった。 このような調査研究は、本研究が当初予定している通りに、法学専攻者の比較法とガヴァナンス論の理解、こどもの社会化と非行少年・犯罪少年の再統合に関する発達心理学の知見、紛争のステイクホルダーの活力を取り戻すための精神医学上の知見を結集するのが是非とも必要であることを改めて確認させるものであった。こどもの社会化と非行少年・犯罪少年の再統合のために、従来にない役割責任をステイクホルダーに引き受けることを国が求める正統性を検討するのは、まさにガヴァナンス論のトピックであり、感情移入・共感といったモラル・センスの涵養や生活スキルの習得に関する仮説と検証には心理学の専門能力が必要になる。Restorative Justiceとの関係では、非行少年・犯罪少年のshame、 shamingの位置づけ、評価が重要性を増してきていること、被害者の満足度がプログラム評価の指標になっていることが今年度調査で判明したが、いずれも、心理学、精神医学からの検討が必要である。 今年度は、今後の調査研究を学際的に進めていくのに必要な共通理解、共通認識を得た。これと併せて、研究費で調達、収集した機材と図書を利用して、各参加メンバーが担当領域の調査を進めている。来年度には、各担当領域での調査を、今年度に得た共通理解、共通認識に有機的に結びつけて、参加者間の議論を深めていくことを予定している。
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