Research Abstract |
1.本研究の第1の目的は,中央アジア・コーカサス諸国の経済発展を経済統計の整備を通じて,歴史的長期的な観点から考察し,数量的分析によってその構造的問題を解明する点にあった.この点に関しては,秘密解除されたソ連時代の経済統計を駆使して,ソ連共和国別の長期経済発展を分析し,その発展の諸類型を明らかにした上で,その中に中央アジアやコーカサス諸国を位置づけ,その経済構造のソ連崩壊時点における特徴を解明した.特にバルト3国等ソ連ヨーロッパ部では,軽工業等消費財産業が発展したのに対して,中央アジア等ソ連東部では,資源産業,重工業,農産原料生産が発展し,消費財産業が極めて脆弱になった事実を明らかにした.さらにソ連極東の石油開発での戦前の日ソ協力を回顧し,現代ロシアの石油開発に対するアプローチの問題点を示唆した. 2.上記課題と関連して,我々が収集した1920年代から60年代までのソ連経済統計資料-その主要部分は中央アジア・コーカサス,ロシア極東地域に関する,ロシア国立経済文書館所蔵の秘密解除資料-のデータベース作りが付随した課題であった.これについては,『中央アジア・ザカフカス・ロシア極東経済統計資料日鐸』を出版し,大学や研究機関に配布することが出来た. 3.第2の基本課題は,第1課題の研究を踏まえて,中央アジア・コーカサス地域の移行経済状況を比較検討する点にあったが,これについては特に中央アジアについて研究が進み,そこでの体制転換プロセスを移行政策・開発・環境という視点から立体的に把握することができた. 4.最後に,中央アジア・コーカサスをイスラム圏との関連で考察する課題では,中央アジアの社会状況がインド対パキスタンの対抗関係によって規定されている事など、その結びつきの深さが明らかになった.また同様の観点からアゼルバイジャンの政治過程の分析を行った。
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