2002 Fiscal Year Annual Research Report
コヒーレントフォノン励起法による量子ゆらぎダイナミクスの研究
Project/Area Number |
14204029
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
八木 駿郎 北海道大学, 電子科学研究所, 教授 (30002132)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊藤 満 東京工業大学, 応用セラミックス研究所, 教授 (30151541)
武貞 正樹 北海道大学, 電子科学研究所, 助手 (30311434)
|
Keywords | 量子ゆらぎ / 量子常誘電体 / ソフトモード / 相転移ダイナミクス / 同位元素誘起強誘電性 / STO / STO18 / FMR |
Research Abstract |
本年度では、本研究の主要な目的である0.5K近傍での量子ゆらぎスペクトルの観測に先立って、量子常誘電体としてほぼ標準物質として扱われ始めているペロブスカイト酸化物誘電体チタン酸ストロンチウム<SrTiO_3>(以下でSTOと略記)の10K近傍における光散乱実験を行った。とくに絶対0度まで常誘電相を保つことで量子常誘電体とされるSTOの酸素を同位元素<^<18>O>で置換した試料(STO18)で発見された強誘電性に着目し、その発現機構のダイナミクスと量子ゆらぎの関係を調べた。STO18試料は高温下で<^<18>O_2>ガス中でのSTOの酸素換で作成され(伊藤)、広帯域高分解能光散乱実験(武貞)によりスペクトルが観測された。その結果、<^<18>O>原子置換による<TiO_6>八面体の有効質量の増加によるSlaterモードの振動数の低下が基本的に強誘電性を引き起こし、強誘電相転移温度に近づくと極性格子振動数の低下した状態でゆらぎの相関が発達し、クラスターダイナミクスが重要になることを示唆するセントラルピークが観測された。したがって、現時点ではSTOの相転移機構としては、ソフトモードダイナミクスが主要な部分を占めるが、転移点近傍では従来FMR(Ferroelectric Micro-Region)として知られている極性クラスター間の相互作用が、緩和型の運度を示して相転移を生ずることが明らかになった。したがって、この場合量子ゆらぎの効果はより低温で現れるものと思われる。 これらのことは、本研究計画の中に予定されており、そのため0.5K近傍に置ける光散乱実験を行うためヘリウム3を用いた極低温光散乱セルが計画されている。本年度において極低温光散乱セルが予定どおりに納入されたので、来年度からは量子ゆらぎそのもののダイナミクスを解明することに着手できる。
|
Research Products
(7 results)
-
[Publications] M.Yamaguchi, T.Yagi, Y.Tsujimi, H.Hasebe, R.Wang, M.Itoh: "Light scattering study of the broad doublet in isotopically exchanged SrTi^<18>O_3"Phys. Rev. B. 65・17. 2102-1-2102-4 (2002)
-
[Publications] T.Yagi, M.Kasahara, Y.Tsujimi, M.Yamaguchi, H.Hasebe, R.Wang, M.Itoh: "Isotopically induced ferroelectric phase transition in SrTi^<18>O_3 studied by Brillouin and Raman scattering"Ferroelectrics. 266. 153-163 (2002)
-
[Publications] M.Kasahara, R.Wang, M.Itoh, T.Yagi: "Soft mode of SrTi^<18>O_<3x>^<16>O_<3(1-x)> studied by Raman scattering"J. Phys. Soc. Jpn.. 71・5. 1254-1256 (2002)
-
[Publications] T.Yagi, M.Kasahara, Y Tsujimi, M.Yamaguchi, H.Hasebe, R.Wang, M.Itoh: "Brillouin and Raman scattering study of the isotopically induced ferroelectric phase transition of SrTi^<18>O_3"Physica B. 316-317. 596-599 (2002)
-
[Publications] H.Hasebe, Y.Tsujimi, R.Wang, M.Itoh, T.Yagi: "Brillouin scattering study of ferroelectric SrTi(^<18>O_x^<16>O_<1-x>)_3"Ferroelectrics. 272. 39-44 (2002)
-
[Publications] M.Kasahara, H.Hasebe, R.Waug, M.Itoh, T.Yagi: "Phase transition of SrTi^<18>O_3 studied with Raman scattering"Ferroelectrics. 272. 15-19 (2002)
-
[Publications] T.Yagi et al.: "Landolt-Bornstein III/36A2 "Ferroelectrics and Related Substances, Oxides : Oxides other than Perovskite-type and LiNbO_3 family""Springer. 540 (2002)