2005 Fiscal Year Annual Research Report
半導体量子ドットにおける光励起電子・スピン系の動的過程の研究
Project/Area Number |
14204030
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
伊藤 正 大阪大学, 基礎工学研究科, 教授 (60004503)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
芦田 昌明 大阪大学, 基礎工学研究科, 助教授 (60240818)
宮島 賢祐 大阪大学, 基礎工学研究科, 助手 (20397764)
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Keywords | 塩化第一銅 / 半磁性半導体 / 量子ドット / スピンダイナミクス / 閉じ込め励起子 / 励起子分子 / 磁気分光 / 3重項励起子 |
Research Abstract |
4年目(最終年度)は、量子ドットCuClに関して閉じ込め励起子の磁気分光測定を行うとともに、半磁性半導体混晶CdMnTeの励起子磁気ポーラロンの高密度励起効果についてスピンダイナミクスの観点から研究を進めた。その結果以下の成果が得られた。 1.NaClマトリックス中のCuCl量子ドットに関して、超伝導マグネットを用いて4Kにおける発光スペクトルの磁場効果を測定したところ、Faraday、Voigtの両配置において磁場印加により発光が顕著な増加を示すことを見出した。Voigt配置発光では、磁場に平行な直線偏光成分(3重項励起子)はピークエネルギー付近の成分で増加を示し、磁場に垂直な直線偏光成分(縦波励起子)は高エネルギー側で顕著に増大を示した。一方、Faraday配置では主に高エネルギー側成分の増大が見られた。これらの顕著な変化は温度上昇とともに減衰し、40K付近で消滅する。 2.これらの結果は、閉じ込め励起子においては、縦波と横波成分が混じるためにFaraday Voigtの両配置において増大が見られると解釈される。さらに、低温下では閉じ込め励起子はストークスシフトを示す表面束縛励起子に移行すると従来解釈されていたが、3重項励起子成分を大量に含む閉じ込め励起子(dark exciton)である可能性が強まった。 3.今後、重心運動閉じ込め励起子の緩和過程における3重項励起子の役割とそのスピンダイナミクスを明らかにするためには、(1)磁場下での励起子発光の磁場依存性、温度依存性、超高速ダイナミクスを明らかにするとともに、(2)二光子励起下の励起子分子発光の超放射的特性に及ぼすスピンダイナミクスも併せて明らかにする必要がある。 4.半磁性半導体CdMnTeの局在励起子の高密度励起効果により発生し、巨大磁気効果を示す新規発光の振動構造は巨大ファラデー回転による変調が原因であることが明らかになった。同時に、この発光が励起光の直線偏光を記憶していることから、位相緩和時間と同程度の発光寿命を持つと予想され、発光のメカニズムはいまだ明らかでないが、磁気ポーラロンの多体効果によるスピン緩和現象が寄与している可能性が高い。
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Research Products
(6 results)