2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14204058
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
平岡 賢三 山梨大学, クリーンエネルギー研究センター, 教授 (80107218)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
曾越 宣仁 山梨大学, クリーンエネルギー研究センター, 博士研究員
佐藤 哲也 山梨大学, クリーンエネルギー研究センター, 助教授 (60252011)
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Keywords | 水素原子 / 低温トンネル反応 / 薄膜半導体 / シリコン薄膜 / FT-IR |
Research Abstract |
原子トンネル現象の研究は、これまでESRなどに代表される多くの手法で研究が行われてきた。しかし、原子トンネル反応を化学合成の立場から研究した例はみられない。本研究では、新しくトンネル反応を利用する化学合成研究の方法論を開発し、トンネル反応の基礎過程を解明し、その応用研究を行うことを目的としている。 10Kの低温基板に、不飽和炭化水素を蒸着し、これに30KのH原子を照射し、FT-IRによる極低温トンネル反応のその場・実時間観測を行った。驚くべきことに、反応速度が低温になるほど早く進むことを見出した。しかも、13K付近で、反応速度が極大を示す反応を数例見出した。そこで、この現象を理論的に検討した。水素原子が相手分子と反応する際、遠心性障壁が生じる。この遠心性障壁をすり抜けたH原子が相手分子を回転励起する共鳴状態が存在することを理論的に確認した。角運動量モーメントを失い、s波となったH原子波が回転励起された分子に捕捉されるBreit-Wignerモデルを用いて反応速度を数値計算したところ、約10K付近で、反応速度が極大を示すこと、および、反応断面積が小さい場合、反応速度が大きな負の依存性を示すことが明らかとなった。 さらに、H原子の関与する低温トンネル反応を、薄膜半導体の合成に展開した。水素原子を照射しながら、同時にSiH_4分子を10Kの基板に照射し続けとところ、プラズマCVDで合成されるアモルファスシリコンと同等あるいはより結晶性の高いシリコン膜が合成された。また、蒸着されたSiH_4分子の99%が固体薄膜を与えた。この膜は大気中で酸化されず、基板への密着性も高い。今後の工業化への展開が期待される。
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Research Products
(7 results)
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[Publications] K.Hiraoka, T.Sato, S.Sato, N.Sogoshi: "Formation of formaldehyde by the tunneling reactions of H with solid CO at 10K revisited"Astrophysical Journal. 577. 265-270 (2002)
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[Publications] K.Hiraoka, T.Sato, S.Sato, N.Sogoshi: "Study on the tunneling reaction of H atoms with a sold thin film of C_3H_6 at 10K"Journal of Physical Chemistry B. 106. 4974-4978 (2002)
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[Publications] 平岡賢三: "宇宙における化学進化の謎を解く:低温ほど速く進むトンネル反応"化学と教育. 50. 9-13 (2002)
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[Publications] K.Hiraoka, T.Sato, S.Sato, S.Hishiki: "Formation of amorphous silicon by the low-temperature tunneling reaction of H atoms with solid the films SiH4 at 10K"Journal of Physical Chemistry B. 105. 6950-6955 (2001)
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[Publications] K.Hiraoka, T.Sato, T.Takayama: "Tunneling reactions in interstellar ices"Science. 292. 869-870 (2001)
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[Publications] 平岡賢三: "極低温トンネル反応による薄膜半導体合成"放射線化学. 72. 19-24 (2001)
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[Publications] K.Hiraoka: "Atom Tunneling Phenomena in Physics, Chemistry, and Biology"Springer. 330 (2003)