2003 Fiscal Year Annual Research Report
オルガネラの分裂を制御する分裂装置の構造と機能の全ゲノム情報を基盤とした解析
Project/Area Number |
14204078
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
黒岩 常祥 立教大学, 理学部, 教授 (50033353)
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Keywords | Cyanidioschyzon merolae / 細胞核ゲノム / オルガネラ分裂装置 / ミトコンドリア分裂・増殖 / 葉緑体分裂・増殖 |
Research Abstract |
本研究の目的は、これまでの成果を踏まえて、ミトコンドリアと色素体の分裂装置の構造と機能をゲノム情報を基盤に解析することであった。先ず、ゲノムの情報から、ミトコンドリアと色素体の分裂に関わることが知られている遺伝子をすべて検索した結果、ダイナミン遺伝子が浮上した。ダイナミンは膜小胞の形成、植物の隔壁形成、ミトコンドリアの分裂、ミトコンドリアの融合など多様な機能を持ち、その遺伝子がファミリーを形成している事がわかっている。 そこで、Cyanidioschyzon merolae(通称シゾン)で同様の遺伝子を検索した。その結果、シゾンではダイナミンファミリーのうち、相同性の高い遺伝子は1個のみであった。この遺伝子について詳細に調べると、ミトコンドリアの分裂に関わるものであった。遺伝子を単離し、発現系を使いタンパク質を合成させ、これに基づいて抗体を作製し、高度な同調分裂系を用いて、細胞周期におけるそのタンパク質の発現をウエスタンブロット法で調べた。その結果、ダイナミンの遺伝子産物は細胞周期を通じて合成されていることが分った。 ところが、免疫蛍光顕微鏡法と電子顕微鏡法を用いて組織化学的に調べた結果、ダイナミンは24時間の細胞周期のほとんどの時間、細胞質内の小胞の中に存在した。しかし、ミトコンドリアの分裂が進行し二つの娘ミトコンドリアに分断される最終段階に、娘ミトコンドリア間の橋の部分にダイナミンタンパク質が細胞質から移動し、娘ミトコンドリアを分断させた。こうしてゲノム情報から、ミトコンドリアの分裂の最後に関与するタンパク質が明らかとなった。 更に詳しくゲノム情報を解析してみると、ダイナミンファミリーの遺伝子群とは高い相同性は示さないが、類似の遺伝子が僅かに1個得られた。この遺伝子はアラビドプシスにはあったが動物、菌類には存在しない。細胞周期における発現を調べた結果、葉緑体の分裂直前に発現していた。この抗体を作って解析してみると、ミトコンドリアと同じように、葉緑体の分裂が進み分裂の最終段階で、細胞質から葉緑体の分裂面に移動し、色素体を分断させた。これらダイナミン遺伝子の存在の発見によって、ミトコンドリアと色素体は、トリオ、即ちFtsZリング、MD/PDリング、ダイナミンリングを使って分裂していることが明らかとなった。MD/PDリングの遺伝子の正体はまだ明らかでないので、今後はこれらのリングを形成するタンパク質を単離して、TOF-MASS解析で遺伝子の決定を進める。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] Matsuzaki et al.: "Genome sequence of the ultra-small unicellular red alga Cyanidioschyzon merolae 10D"Nature. (in press).
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[Publications] Miyagishima et al.: "Two types of FtsZ proteins in mitochondria and red-lineage chloroplasts : the duplication of FtsZ is implicated in endosymbiosis..."J.Mol.Evol.. 58. 1-13 (2004)
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[Publications] Miyagishima et al.: "An evolutionary puzzle : chloroplast and mitochondrial division rings"Trends in Plant Sci.. 8. 432-438 (2003)
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[Publications] Miyagishima et al.: "A plant-specific dynamin-related protein froms a ring at the chloroplast division site"Plant Cell. 15. 655-665 (2003)
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[Publications] Ohta et al.: "Complete sequence and analysis of the plastid genome of the unicellular red alga Cyanidioschyzon merolae"DNA research. 10. 67-77 (2003)
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[Publications] Nishida et al.: "Dynamic recruitment of Dynamin for final mitochondrial severance in a red alga"Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.. 100. 2146-2151 (2003)