2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14204080
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (A)
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
蟻川 謙太郎 横浜市立大学, 大学院・総合理学研究科, 教授 (20167232)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
木下 充代 横浜市立大学, 大学院・総合理学研究科, 日本学術振興会特別研究員(PD)
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Keywords | 昆虫 / 複眼 / 視覚行動 / 視覚中枢 / 色覚 / 色恒常性 / 色誘導 / 微小脳 |
Research Abstract |
本年度は、1.視葉板シナプス結合様式の解析、2.色恒常性行動・生理実験系の確立、3.アゲハ脳地図の作成の3点について研究を行った。項目ごとに実績を記述する。 1.視葉板シナプス結合様式の解析 アゲハ複眼を構成する個眼には3つのタイプがある。視細胞には、紫外、紫、青、緑、赤、広帯域の6種があり、これが3タイプの個眼にある組合せで含まれる。視細胞は複眼網膜部に光受容部位と細胞体部位を持ち、それぞれが視葉板に軸索を伸ばして、視覚二次ニューロンおよび他の視細胞とシナプスを形成している。今年度は各視細胞の視葉板における形態を、共焦点レーザー顕微鏡を用いて精査した。結果、視細胞によって、隣接する個眼にまで軸索突起を伸ばすものと伸ばさないものとがあることが分かった。 2.色恒常性行動・生理実験系の確立 拘束したアゲハにある色の色紙を提示しながら蜜を与えた。蜜無しでも色紙に口吻を伸ばすようになったとき、色学習が成立したとした。学習色をそれと近い色と共に提示、異なる色の照明下でアゲハに色紙を選択させた。どんな色の照明でも学習色が選ばれれば、吻伸展行動を指標に色恒常性を確認できたことになる。実際、この条件で色恒常性を確認することはできた。しかし実験個体数に対して学習成立個体の割合が著しく低く(1割未満)、さらに条件検討を重ねる必要があることが明らかになった。 関連して、アゲハにおける色誘導の存在を確認した。色誘導は色恒常性の基礎となる現象で、色恒常性の神経基盤を解明する上で貴重な情報を与える。黒背景で色学習させたアゲハに、青や黄の背景で学習色を選択させた。結果、黄背景は青、青背景は黄を、緑背景は紫を、それぞれ誘導することが分かった。 3.アゲハ脳地図の作成 脳地図の作成に必要な神経解剖学的な実験をほぼ完了した。現在は補足的に、脳から口器に伸びる神経束の検索を行っている。
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Research Products
(12 results)
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[Publications] Qiu X: "Ommatidial heterogeneity in the compound eye of the male small white butterfly, Pieris rapae crucivora"Cell and Tissue Research. 307. 371-379 (2002)
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[Publications] 若桑基博: "アゲハ複眼における新規レチノール結合タンパク質Papilio RBPの同定と機能解析"上智大学生命科学研究所紀要. 2. 23-30 (2002)
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[Publications] 蟻川謙太郎: "チョウの見る世界を探る-色覚の生理学と行動学"遺伝. 56. 28-32 (2002)
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[Publications] Qiu X: "Localization of spectral receptors in the distal tier of the ommatidium of the male small white butterfly, Pieris rapae crucivora : evidence for spectral heterogeneity of the ommatidia"Journal of Comparative Physiology A. 189. 81-88 (2003)
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[Publications] Arikawa K: "Coexpression of two visual pigments in a photoreceptor causes an abnormally broad spectral sensitivity in the eye of a butterfly, Papilio xuthus"Journal of Neuroscience. (in press). (2003)
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[Publications] Qiu X: "Polymorphism of red receptors : Sensitivity spectra of proximal photoreceptos in the small white butterfly, Pieris rapae crucivora"Journal of Experimental Biology. (in press). (2003)
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[Publications] Wakakuwa M: "A novel retinol-binding protein in the retina of the swallowtail butterfly, Papilio xuthus"European Journal of Biochemistry. (in press). (2003)
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[Publications] Arikawa K: "Complex worlds from simplerr nervous systems(分担執筆)"MIT Press(in press). (2003)
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[Publications] 蟻川謙太郎: "生物学データ大百科事典(分担執筆)"朝倉書店. 2582 (2002)
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[Publications] 蟻川謙太郎: "チョウの生物学(分担執筆)"東京大学出版会(in press). (2003)
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[Publications] 蟻川謙太郎: "もうひとつの脳〜微小脳の研究入門(分担執筆)"培風館(in press). (2003)
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[Publications] 蟻川謙太郎: "生物物理学ハンドブック(分担執筆)"朝倉書店(in press). (2003)