2002 Fiscal Year Annual Research Report
生体細胞の凍結過程におけるミクロ熱・物質移動の能動的促進と活性評価法の確立
Project/Area Number |
14205033
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (A)
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
棚澤 一郎 日本大学, 工学部, 教授 (30013105)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
白樫 了 東京大学, 生産技術研究所, 助教授 (80292754)
尾股 定夫 日本大学, 工学部, 教授 (90060186)
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Keywords | 医用生体工学 / 生体細胞凍結保存 / 凍害防御剤 / 活性評価法 / 能動的物質移動制御 / 柔らかさ計測 / 生体熱・物質移動 / 電場利用 |
Research Abstract |
生体組織の凍結保存を成功させるには、凍結時に細胞の内外に生成する氷による致命的な損傷(凍害)を抑止する必要がある。そのため、凍結過程での冷却速度を制御すると同時に、凍害防御剤の適切な選定によって氷核の生成を抑制することが行われている。凍結保存の一連の過程を通じて、細胞の生存を支配する現象には(1)浸透圧ストレス(細胞の過膨張・過収縮)、(2)細胞内凍結、(3)細胞外で生成した氷晶による力学的ストレス、(4)生化学的毒性、などがある。理想的な凍害防御剤とは、これらすべてをあらゆる冷却速度において回避できる能力をもつものと考えられる。すなわち、冷却速度によらず、生理的浸透圧(約300mosmol/kg)前後の濃度で細胞内の凍結を抑制する効果をもち、かつ細胞外では凍結しないか、凍結しても氷晶が十分に小さく、細胞を圧迫しない必要がある。 本研究の第一の目的[テーマ1]は、上記(1)〜(4)を回避できる凍害防御剤を選定し、さらに電場を用いた能動的方法を用いて、凍害防御剤を速やかに細胞内に取り込むことによって、上記(2)の抑止を実現することである。 第二の目的[テーマ2]は、凍結過程での生体細胞の活性評価法の確立である。本研究では、蛍光顕微鏡による工学的観察や超音波を用いた細胞の力学特性計測など、実時間での活性評価法の確立をはかった。これら2テーマに関する本年度の研究成果の概要は次の通りである。 [テーマ1]:上に述べた条件を満足する候補物質として、本年度はアルギン酸とトレハロースを選択した。試料細胞としては、取り扱いが容易であることからマウス骨髄腫株を用いた。実験の結果、(1)アルギン酸は、低濃度で高粘性であるため、細胞膜の形状を維持する機能があること、(2)トレハロースは、本実験範囲の冷却速度では細胞外に微細な氷晶をつくるため、細胞の変形が少なく、細胞内に取り込まれなくても細胞内凍結を抑制する効果をもつこと、などがわかった。 [テーマ2]:実際の生体細胞を用いた実験に先立って、アルギン酸と塩化カリウムを用いて疑似細胞を作り、凍害防御剤の効果および凍結時の氷晶の成長と、氷晶による(疑似)細胞での損傷発生過程の観察を行った。また、超音波パルス法による軟組織の力学的特性測定法を発展させ、卵細胞のような微小生体の「柔らかさ」を測定するためのバイオセンサーの開発を行った。
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Research Products
(5 results)
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[Publications] 白樫了, K.J.Muller, V.Sukhorukov, U.Zimmermann: "生理浸透圧凍害防御剤の凍結解凍過程における細胞への影響とElectroporationによる細胞内導入の効果"日本機械学会論文集(B編). 68・672. 201-208 (2002)
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[Publications] R.Shirakashi, C.M.Kostner, K.J.Muller, M.Kurschner, U.Zimmer-mann, V.L.Sukhorukov: "Intracellular Delivery of Trehalose into Mammalian Cells by Electropermeabilization"Membrane Biology. 189. 45-54 (2002)
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[Publications] 村山嘉延, 尾股定夫: "細胞触診用マイクロバイオセンサの開発と卵細胞への応用"日本エム・イー学会第40巻特別号論文集. 65 (2002)
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[Publications] S.Omata, Y.Murayama, C.E.Constantinou: "Micro-mechanical sensing platform for the characterization of the elastic properties of the ovum via uniaxial measurement"BECON 2002 (NIH). 17 (2002)
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[Publications] Y.Hatakeyama, T.Ono, N.Sato, H.Sakuma, K.Koyama, N.Inoue, S.Takenoshita, S.Omata: "Usefulness of the tactile sensor for estimating the degree of liver fibrosis and the DNA synthesis activity of remnant liver cell after partial hepatectomy"Fukushima Journal of Medical Sciences. 48・2. 93-101 (2002)