2002 Fiscal Year Annual Research Report
広域的環境システムにおけるサンゴ礁生態系の物理・生態環境評価と保全戦略
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14205071
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
灘岡 和夫 東京工業大学, 大学院・情報理工学研究科, 教授 (70164481)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大見謝 辰男 沖縄県衛生環境研究所, 赤土研究室, 室長
酒井 一彦 琉球大学, 熱帯生物圏研究センター, 助教授 (50153838)
茅根 創 東京大学, 大学院・理学研究科, 助教授 (60192548)
波利井 佐紀 東京工業大学, 大学院・情報理工学研究科, 助手 (30334535)
安村 茂樹 財)世界自然保護基金日本委員会, サンゴ礁保護研究センター, 研究員
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Keywords | サンゴ礁 / 物質循環 / サンゴ群集代謝 / 流動モデル / リモートセンシング / サンゴ幼生広域輸送 / サンゴ幼生加入 / オニヒトデ・モノクローナル抗体 |
Research Abstract |
1)サンゴ礁および周辺生態系における物質循環とサンゴ群集代謝の評価:「サンゴ-藻場-干潟-マングローブ」統合生態系の物質循環を評価する際に基本的に重要となる流動モデルの開発を,研究代表者らが先に開発した準3次元浅水乱流モデルSDS-Q3Dモデルをベースとして行うとともに,検証のための現地観測を沖縄・石垣島の吹通川河口域および白保リーフ海域で実施した.また,吹通川河口前面海域では,サンゴ群集代謝活動をサンゴ礁およびその周辺系全体での物質循環の枠組みの中で定量的に評価するための観測を併せて実施した. 2)サンゴ礁モニタリング手法の高度化:従来の単純な海底反射率概念によらないサンゴ・キャノピー層の光学的layerモデルを開発し,非線形逆推定モデルと組み合わせることにより,リモセン画像からサンゴ・キャノピー層の厚さや密度・水深等を推定するモデルを開発した.さらに,サンゴ礁内の赤土堆積の状況をモニタリングするためのリモセン画像解析法を開発した. 3)サンゴ幼生広域輸送・加入過程に関する現地調査:沖縄本島西方海域において2002年6月上旬に現地調査を行い,広域多点プランクトンネット採取によりサンゴ幼生の時空間的な拡散・輸送過程を明らかにした.また,同時に行ったGPS搭載型小型漂流ブイ観測ならびにHFレーダによる広域海洋表層流動観測によって表層粒子輸送パターンと海水流動場の関係を明らかにした.これらによって,慶良間列島からのサンゴ幼生が沖縄本島沿岸の広い範囲に供給されていること,また,その一部は慶良間列島方向に回帰し,もともと慶良間列島周辺に滞留している幼生とともに,慶良間列島自体の維持機構(self seeding)に寄与している可能性が高いことが明らかにされた.さらに,同時期に行った定着基盤を用いた加入調査によって,沖縄本島西岸域に供給されたサンゴ幼生が供給先で加入に結びついていることを裏付けるデータを得ることができた.また,サンゴ幼生の海底基盤への定着過程に対する環境ストレスの効果を定量的に明らかにするため,様々な赤土懸濁濃度・堆積量のもとでのサンゴ浮遊幼生の海底基盤への定着量の違いを室内実験によって明らかにした. 4)オニヒトデ幼生の広域動態調査のための判別法開発:現在,琉球列島で大発生しつつあるオニヒトデの広域動態を明らかにするため,従来不可能であったオニヒトデ幼生判別を可能にするモノクローナル抗体の開発に成功した.
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Research Products
(20 results)
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[Publications] E.C.PARINGIT, K.NADAOKA: "Reflectance sensitivity of coral reef areas to optically-active constituents"Proc. of the 24^<th> IEEE International Geoscience and Remote Sensing Symposium (IGARSS). (CD-ROM). (2002)
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[Publications] E.C.PARINGIT, K.NADAOKA: "Morphological inferences from canopy reflectance model for coral reef areas"Proc. of the 6^<th> Pan-Ocean Remote Sensing Conference (PORSEC). 379-384 (2002)
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[Publications] E.C.PARINGIT, K.NADAOKA: "Two approaches in reflectance modeling of coral reef areas"Proceedings of the International Symposium on Marine and Coastal Environments-ERIM. (CD-ROM). (2002)
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[Publications] H.TAMURA, K.NADAOKA: "Role of seagrass flexibility on surrounding current field"5th International Seagrass Biology Workshop. (2002)
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[Publications] 田村 仁, 灘岡和夫: "可撓性に着目した藻場キャノピー周辺の流動・乱流構造に関する実験的研究"海岸工学論文集. 49・1. 341-345 (2002)
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[Publications] 灘岡和夫, 波利井佐紀, 三井 順, 田村 仁 他10名: "小型漂流ブイ観測および幼生定着実験によるリーフ間広域サンゴ幼生供給過程の解明"海岸工学論文集. 49・1. 366-370 (2002)
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[Publications] 灘岡和夫, 波利井佐紀, 池間健晴, Enrico Paringit 他4名: "沖縄・慶良間列島におけるサンゴ産卵とスリック動態に関する観測"海岸工学論文集. 49・2. 1176-1180 (2002)
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[Publications] Enrico Paringnit, 灘岡和夫: "多バンド・リモートセンシングに基づくサンゴ礁マッピングヘの逆解析手法の応用"Proc. of the 24^<th> IEEE International Geoscience and Remote Symposium (IGARSS). 49・2. 1191-1195 (2002)
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[Publications] 高橋亜依, 八木 宏, 田村 仁, 灘岡和夫: "河口干潟域の環流構造に関する数値実験"日本流体力学会誌「ながれ」21巻別冊 日本流体力学会年会2002講演論文集. 484-485 (2002)
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[Publications] 田村 仁, 灘岡和夫: "藻場キャノピー周辺の波動・流動・乱流構造に関する実験的研究"日本流体力学会年会. 492-493 (2002)
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[Publications] 渡邊 敦, 茅根 創, 所 立樹, 田村 仁, 灘岡和夫: "石垣島・笛通川河口域におけるPCO2および炭酸系変動"日本サンゴ礁学会第5回大会講演要旨集. 3 (2002)
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[Publications] 灘岡和夫, 波利井佐紀, 三井 順, 鈴木庸壱, 田村 仁 他6名: "慶良間列島-沖縄本島西方海域におけるサンゴ幼生分散・供給過程に関する調査"日本サンゴ礁学会第5回大会講演要旨集. 14 (2002)
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[Publications] 酒井一彦, 西川 昭, 向草世香, Andrew Heyward 他6名: "慶良間列島-沖縄本島西方海域におけるサンゴ幼生加入に関する調査"日本サンゴ礁学会第5回大会講演要旨集. 15 (2002)
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[Publications] 西川 昭, 酒井一彦, 灘岡和夫, 波利井佐紀: "慶良間諸島と沖縄本島サンゴ群集の集団遺伝学的研究"日本サンゴ礁学会第5回大会講演要旨集. 16 (2002)
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[Publications] 波利井佐紀, 灘岡和夫, 岩尾研二, 林原 毅: "サンゴ幼生の定着に及ぼす赤土の影響"日本サンゴ礁学会第5回大会講演要旨集. 17 (2002)
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[Publications] E.C.PARINGIT, K.NADAOKA: "Application of an inverted multi-layer coral reflectance model to satellite remote sensing data"日本サンゴ礁学会第5回大会講演要旨集. 27 (2002)
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[Publications] 波利井佐紀, 灘岡和夫: "赤土がハマサンゴの繁殖に及ぼす影響"日本サンゴ礁学会第5回大会講演要旨集. 35 (2002)
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[Publications] E.C.PARINGIT, K.NADAOKA: "Monitoring rainfall-induced sedimentation in the Shiraho Reef by in-situ measurement and multi-temporal remote sensing analysis"日本サンゴ礁学会第5回大会講演要旨集. 38 (2002)
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[Publications] 灘岡和夫, 波利井佐紀, 三井 順, 鈴木庸壱, 浜口昌巳 他3名: "モノクローナル抗体幼生判別技術に基づくオニヒトデ幼生分散調査計画の紹介"日本サンゴ礁学会第5回大会講演要旨集. 41 (2002)
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[Publications] 浜口昌巳, 佐々木美穂, 岡地 賢, David Idip Jr., 波利井佐紀, 灘岡和夫: "モノクローナル抗体によるオニヒトデ幼生の種判別法の開発"日本ベントス学会第16回大会プログラム・要旨集. 31 (2002)